天使のくれた時間【ネタバレ感想】見逃していた良い映画#いい歳になると、こういったロマンスがいいです
以下、ネタバレありの感想となります。独自解釈による偏見もございます。どうか、ご了承のほどを宜しくお願い致します。製作者などの敬称も略とさせていただきます。
【読み飛ばした方がいい前説】ここまで至る道
『天使のくれた時間』が、録画されておりました。2020年秋のことです。
予約した憶えはありません。が、よくあることです。手に余るほどの機能を備えたデジタル機器に理解しようとする努力は、とっくに捨てております。
予約した憶えがないにも関わらず録画されていた、とする現象は、どうやら自分だけでもないようです。ポルターガイストや就寝中に小人さんが暴れたせいでもなければ、別にいいか!です(笑)。
加えて、ネットと共にある生活様式は「選んだもの」となる傾向があります。
不意に飛び込んでくる琴線に触れるものに接する機会が、一方的な視聴が減った分だけ失われた気がします。
無駄に引っ張られる時間がなくなったと前向きに捉えられればいいのですが、どうも「新しいモノ好きではない家庭」に育った環境が響いたか(笑)。
周囲がコンパクトディスク(CDという)とか、ミニディスク(MDという)とかになっていく横で、レコードとカセットテープでした。デジタル放送になるまで、ビデオデッキだったことは皆より遅れていなければならない感覚が染み付いていたせいに違いありません。
でも令和に入った現在は、アナログプレーヤーが人気だから、時代はどう転ぶか分からないものです。
と、いうことで録画されていた『天使のくれた時間』を録画した年を跨いでなお3ヶ月ほど経った時点で、ようやく観ます。
そして所有者の意向を汲むことなく、勝手に録画するレコーダーに感謝しております。なので現在使用中の機器を使いこなそうなどとする気概は、いっそう消滅へ向かっております(笑)。
【ちょこっとデータ】映画の概要
『天使のくれた時間』同名のライトノベルがありますが、ここで取り上げるは映画です。
原題は『The Family Man』直訳すれば『家族の男』2000年公開のアメリカ映画です。
題だけから察すれば、ハートウォームな作風を想像します。実際に、感動を呼ぶ作品です。
しかしながら、公開されてから20年が経過しております。
人は変わります。
キャスト及びスタッフ・ロールを眺めれば・・・、
私生活むちゃくむちゃくちゃで離婚繰り返す浪費家に、セクハラで訴えられたスタッフときます。
エンタメ・ニュースを少々注目していれば聞いたことがある悪業を成した人物たちが並んでいるではありませんか。
なるほど、創造と人格は別モノである例が、ここにあります(笑)。
ただ、この映画は20年以上も前になります。
撮影当時は、ゴシップ記事を賑わす時点よりはマシだったかもしれません。もちろん当時から、酷かったかもしれません。
けれども、良いモノを作ってくれたことは間違いないです。
そして何より後になっても問題を起こさなかった(離婚はあったけれど)主演女優のティア・レオーニが、とても素敵でした。
彼女の出演映画を追いかけたくなったくらいです。
けれどもここで書いている者がすでに所有している映像ソフト『ジュラシック・パークIII』に出演しておりました。恐竜映画を押さえて当然な当ブログであります。
しかもティア・レオーニが『ジュラシック・パークIII』の直前に出演していたのが『天使のくれた時間』。
『ジュラシック・パークIII』で引っ掛かっていれば、とっくに『天使のくれた時間』へ巡り合ったはずです。とても残念であります。
もっとも異性を押しのけてでも怪獣!的な気質を少なからず抱えていれば、悔やんでも詮ないことです。
感性のアンテナを広げるというのは、まったく難しい限りです。
特に際立って向かう方面があるから、目が曇ってます。
思い込みが先立つが当ブログの特徴として、今後もよろしくお願い致します。
【オチまでいかない】あらすじ紹介
冒頭は、空港です。
まだ若き頃と思われるジャックとケイトのカップルです。
なぜ若き頃としたかといえば、主人公のジャックであるニコラス・ケイジに、ケイトを演じるティア・レオーニが、そのまま演じているからです。
若い格好をするケイトと、若年寄りなのか、おっさん風が変わらないニコラスもといジャックであります。
仕事の成功を夢見てロンドンへ旅立とうとするジャックに、ケイトが引き留めにかかります。
嫌な予感が走った胸の内を素直に伝えます。
けれども、もうフライト寸前であればジャックは振り切ります。
離れても心は変わらない、として予定通りに旅立ちます。
ケイトの予感通りになってしまいます。
あれから13年が経過したジャックは、どうやらアメリカへ戻ってきたようです。ウォール街で買収などはお手の物といった感がある辣腕経営者になっています。
セクシーな格好をした美女を部屋へ招く私生活を送っています。
成功した仕事に没頭する毎日。女性は欲求の隙間を埋めるだけのものとして扱えるほど金銭に地位も得ています。
雪が降りしきるクリマス・イヴ。
今日も会議室で幹部連中の尻を叩くジャックですが、アメリカでは最も大切な祝祭日であります。
高級車の象徴といえるフェラーリに1人運転して帰る道すがら、途中に寄ったコンビニ?においてです。
換金したい宝くじが偽物とされ怒って拳銃を取り出す黒人に出くわします。
この黒人さんの名は、キャッシュ。この方が天使です。従来のイメージを大きく裏切る風貌です。
天使そのものが信じがたい存在に加え、金銭のトレードを楽しむような黒人さんでは、ジャックがキャッシュを風来坊として扱ってしまうことは仕方がないです。
気前のいい申し出でジャックはその場を収めては、キャッシュと共に店から出ます。
キャッシュへ仕事へ就くよう勧め、手助けは厭わないことも言い添えます。いかにも成功者が口にしそうなことを言ってます(笑)。
高い地位が、どうしても上から目線を避けられません。
それが、とても天使には見えないキャッシュの気に障ったか。
お前は全てを手に入れたのか?と尋ねます。
全てを手に入れた!と答えたジャックです。
相手は世を超越した存在です。
その翌朝、ジャックはベッドで目を醒します。
すると、ケイトが隣りに寝ている。
まだ学校へ上がったばかりくらいの娘アニーに、生まれたての息子までいる。犬まで買っている。
家はあるが、幼い子供がいる生活よろしく雑然としている。何より高級感から程遠い、いかにも庶民がようやく手にしたマイホーム然している。
ジャック、どうやら天使の策謀により、13年前のケイトの要望を受け入れた世界線に放り込まれた模様です。
高級な生活から、一転して汲々です。
ジャックはボロボロの一室を与えられたタイヤ店のセールスマンで、ケイトはボランティア弁護士のようです。
現状を受け入れ難いまま途惑うジャックの異変は、友人には倦怠期で片付けられてしまいます。忙しい大人は、そうそう実害のない変化には構っていられません。
娘のアニーだけが気づきます。もっとも幼い子らしく、悪い宇宙人がパパを乗っ取ったわけでない説明に安心します。
ジャックにとっては、現状把握にアニーの存在は欠かせませんでした。
おしゃまで手強そうな感じをさせながら、実は無邪気な表情がとびきりなアニー。天使は、まさにこの娘ではないか、と思わせる愛くるしさです。
離れ難い魅力の我が娘。ジャックの心を大きく揺さぶるには充分すぎます。
都会で成功していた生活へ戻りたい、とジャックは考えています。
家族を都会で良い暮らしを味わせてやりたい。という想いも湧いてきているようです。
タイヤ店へ、かつての世界で社長として勤めていた会社の会長が車の修理で寄ります。かつての世界で発揮した手腕で取り入ることに成功します。
けれども妻のケイトは、現在の生活に満足しています。そんな様子に苛立ったこともあるジャックです。
この世界でもまた社長へ昇り詰める機会を得たジャックは、反対される覚悟でケイトに相談というより、打ち明けます。
このままの暮らしで生涯を終える気だったとするケイトは、それでもジャックの行く道へ付いていく覚悟であることを伝えます。
ジャックは知ります。成功へ邁進する道程で、ケイトと別れる必要なんてなかった。
ジャックは考えもしなかったか、もしくはわざと目を逸らしていたかもしれない可能性を自覚することとなります。
【ネタバレの】作品評:2択ではない
地上波放送時間は、2時間です。
作品自体の尺は、125分です。
テレビ放送分は、ノーカットではありません。
ならば、もう購入だ!となります。幸いにもブルーレイ化までされていました。
商品掲載の作品レビューに、独身主義のまま資本社会で成功を望む者を否定する作品である、とする意見が寄せられています。
人の考え方は様々であり、自分では到底に至らない意見があることを知れて良かったです。
確かに、そのような解釈も可能であります。万人が同じ感想にはならない、と再確認させられます。
しかしながら、せっかく感動した作品です。やはり持ち上げたい気分になります。
推したい気持ちのままに、以下、結末までを含めたレビューになります。
ここまで来てなんですが、ネタバレしたくない方は、これ以上の進んではいけません。
主人公ジャックの置かれた立場から、仕事の成功を取るか、家族の愛を取るか、といった論調が見られます。
個人的な意見としては、どちらかを取るかといった2択の問題ではないのです。
ジャックは、本当に仕事だけの成功を望んでいたのか?
なぜすっかり成功した男が、なお昇り詰めるための「家庭」を持たなかったのか?13年間も経ち、地位も収入もあれば、なおのこと。より高い地位に名声を求めて伴侶を得る選択は充分にあることです。
より成功を得るために、家族を持つ。気持ちは大事ですが、社会に出てからの結婚は打算抜きで行われる例のほうが少ない。
程度の違いはあれ、気持ちよりも見極めであります。
ジャックは、ただ仕事だけです。
クリスマスイヴの夜に、1人となった時に胸のうちに巣食う想いが、ちょっぴり顔を出していたかもしれません。
離れても心は変わらない、としたのは、ジャックの方なのです。
捨てる格好となった後ろめたさを押し隠すジャックの心底を見透かした天使が起こす奇跡。
けれども奇跡として放り込まれた世界は、ジャックが招いたものです。
13年が経とうとも、妻となったケイトを美しいと感じる。
彼女との間にもうけた娘のアニーが、心から愛するままに接した時に、本当のパパが帰ってきたと喜ぶ姿が離れるはずもない。
けれども、それは起こっていない世界。実際にはない、夢の話し。
人生という選択で見れば正しいとさえ言える成功を収めても、ジャックという個人においては選択した自体が誤りだった。
そして13年前に帰れなくても、まだ未来を見られる状況にあります。今やボランティアではなく、高級取り弁護士となってパリの仕事を任せられるほどやり手となったケイトです。
冒頭と同じく、ラストは空港です。
ただし今度はケイトが旅立つ側です。
ジャックが引き止める役です。
ケイトにとっては、2人の関係は昔のこととしてフライトへ向かいます。
そこでジャックが必死に訴えることは、天使によって経験させられたケイトと家族として過ごした日々です。2人の子供がいて、名前まで出して、手を焼かせられるけど愛おしい存在であることを伝えます。
ケイトもこのままではジャックと同じ道を辿りかねません。ここまで同じような道を歩んできていたのかもしれません。
ビジネスで成功すれば、と心の底から成りきれない2人です。
そして2人は、これからの関係性を築ける身の上にあります。
最後に、派手な抱擁やラブシーンがあるわけではありません。
ジャックの「空港のカフェでお茶しよう」の訴えを受け入れたケイト。片隅のテーブルを挟んで2人が熱心に何か会話をしているような様子がラストとなります。
主人公が望んだ仕事の成功で捨ててもおかしくない想いを、再び自覚するまでを描いた大人のラブロマンス。「人生の選択」は答えを突き詰めるものではなく、割り切れない感情をすくって見せたひとつの要素に過ぎない。
でも、そのひとつの要素がどれほど心へ刺さるか。
映画ならばの奇跡を観せた作品は、20年以上経っても感動する者を生み、また今後においても生み続けるように思われます。