ウルトラマンZ(ゼット)【ネタバレ感想】第23話 「悪夢へのプレリュード」
以下、ネタバレありです、独自解釈による偏見の酷いものとなっております(笑)どうか、ご了承のほどを。製作者などの敬称も略とさせていただきます。
キャスト
⚪︎ナツカワハルキ/ウルトラマンZ 平野 宏周(ひらの こうしゅう)/畠中 祐(はたなか たすく)
⚪︎ヘビクラショウタ 青柳 尊哉(あおやぎ たかや)
⚪︎ナカシマヨウコ 松田 リマ
⚪︎オオタユカ 黒木 ひかり
⚪︎イナバコジロー*バコさん 橋爪 淳
⚪︎クリヤマ長官 小倉 久寛(おぐら ひさひろ)
⚪︎カブラギシンヤ 野田 理人(のだ りひと)
⚪︎ウルトラマンゼロ 宮野 真守(みやの まもる)
⚪︎朝倉リク/ウルトラマンジード 濱田 龍臣(はまだ たつおみ)
⚪︎ベリアロク 小野 友樹(おの ゆうき)
*青字は声優さん。キャストの振り仮名は、ここで書いている人が一瞬でも読むのに悩んだ俳優さんに振らせていただきました。
悪夢へのプレリュード
今さらながら、惜しい
いきなりスーパー戦隊ネタになりますが、昨年度に放送されていた『騎士竜戦隊リュウソウジャー』で出演なされていた金城茉奈(きんじょう・まな)が病気のため鬼籍に入っていた報が流れました。享年25だそうです。
『騎士竜戦隊リュウソウジャー』の放送において、後半に海外へという理由付けのもと出演がありませんでした。当時はちょっとしたテコ入れくらいか、と思っていましたが、療養のために休養をなされていたことが発表されました。
周囲へ不治の病にかかった旨は伝えることは、非常に難しい。また家族を始めとした近親縁類者は、なおのことであったと思われます。よく分かります。
『騎士竜戦隊リュウソウジャー』の最終回で顔を揃えた出演は、現在になってとても重い意味を感じずにいられません。まだ覚悟までは至っていなくても、周囲に伝えないまま相当な想いで出演へ臨まれたと思います。
まだ他人の死去が絵空事だった以前ならともかく、現在の自分には辛すぎて当分は観られそうもありません。
個人的になりますが、病気が多すぎる。気晴らしにするつもりのブログが、却って正面から向き合う羽目になっています。けれども逃げてもいけない、ということなのかもしれません。
亡くなったと聞けば、毎度のように思い出すのは吹原幸太(ふきはら こうた)『ウルトラマンZ』のメイン脚本家であり、田口清隆メイン監督と共に、シリーズ構成を担当した方です。
コロナ禍で社会が自粛期間にあったなかで、突然に倒れる形でお亡くなりになりました。37歳という若さです。
『ウルトラマンZ』を観ていればお分かりの通り、卓抜な才気溢れるクリエイターでありました。
映像作品の完成度は、脚本の出来が前提にあります。連続ものとするテレビは、全体を見渡す構成力が問われます。
以上の条件を、高水準で満たしていた吹原幸太。田口監督と名コンビとなる可能性もありました。
これからの人物が亡くなることは、お悔やみ申しあげますなどと言う前に、ただただ悲しいです。自分などのような者なんかより、と考える今日この頃です。
ウルトラのテーマ
特撮番組から離れられない理由の一つに、矛盾さと向き合う姿勢があります。
敵味方という陣営に分け、バトルという暴力的なものを扱いつつ、設定そのものへ疑問を投げかけることを忘れない。
残酷な現実の前に正悪の論法は崩れ、正しいと思い込むことの恐ろしさを訴えてくる。正義のヒーローが活躍するという作品で、敢えて取り扱ってきます。
特撮番組は、特にウルトラシリーズは創成期から、それをテーマとして扱ってきています。
「地球を守っているんじゃなくて、人類が人類を守っているだけでしょ」
意気揚々に人類の防衛を語られてくる画面に、突っ込むユカの言葉。
ウルトラシリーズにおいて、もっと大風呂敷を広げれば特撮ヒーロー番組において、これほど矛盾を端的に表現したセリフはないのではないか。
ここまで真摯に人間の心奥と向き合いながら、エンタメとしての楽しませ方も心得た『ウルトラマンZ』という作品が、優れていないわけがない。
まだ終わっていないにも関わらず、すっかりのぼせ上がっている者がここにいることからも、お分かりになるかと思います(笑)。
ウルトラマンZが、あと2回で終わる・・・信じられないような、信じたくないような気分にあります。
怪獣総進撃
しかし、ここで書いている者は、所詮は怪獣好きから出発したヲタもの。ドラマの崇高さに打ちのめされた、と言いながら、特撮シーンに心奪われます。
特に今回は怪獣がいっぱいです。
宇宙人系ではなく、地球の動物系?である怪獣が勢揃いはあまりないので、観ているだけでときめいておりました(笑)。

キングゲスラが、もしザザーンだったら?なんて考えてしまったタッコングと海から上がり暴れた街のシーンです。
『帰ってきたウルトラマン』初回冒頭を思い起こされるような雰囲気です。もっとも帰マンの方は怪獣同士の死闘であり、カメラワークが全てミニチュアの建物の隙間からアオるという、とんでもなさ。
時を経て現代において、メガホンの坂本浩一。
インタビューからしても、相当なものですから、こらないわけがない。
ミニチュア越しのカット割りで、帰マンの第1回『怪獣総進撃』を彷彿させてくるだけでは済ませません。
過去と現代の特撮事情で大きく違う点として、撮影用プールの有無が挙げられます。
現代ではステージに水を張らなければならないので、深さは望めません。
それだけに、リアルに水飛沫が上げての撮影シーンは貴重です。

しかも、これで終わらない。
現代ながら方法で、海の深さを見せるシーンも取り入れてくる。下手すれば浅瀬で戦っているように解釈されかねないところへ、場所は海であることを知らせてくる場面を忘れない。

昔の特撮技術であると、海中は照明で表現するに止まります。微妙な気泡の表現がなされるようになったのは、それほど遠くない時期からであります。
海中深く引き摺り込まれたウルトラマンZに、シーンの進化を実感させられます。こうしたシーンを忘れずに挿入してくるところには、監督のセンスを感じずにいられません。
特撮用プールが全て撤去となった時には、特撮時代の終焉が訪れたような気になったものです。けれども現代の特撮スタッフは、そんな懸念を越えて創造してきてくれます。
特撮にはもう未来がない、なんて考えた頃の自分を恥入りたいです。外から物を考える者などより、その機会を与えられれば開花させるスタッフは多くいる。
やはり外からの雑言など構うことなく、作品は作られ続けられなければなりません。
いいやつではないか
海からやってきたタッコングとキングゲスラのコンビに対し、地底怪獣はトリオでやってきます。
デマーガに、ゴメスとパゴスといった具合に、ウルトラマンタイガからお馴染みな連中であります。
特に「溶鉄怪獣 デマーガ」が、です。
こやつデマーガがウルトラマンZに登場したことで、ついに『ウルトラマンX』で初登場以降、ニュージェネ作品へ常に出演することと相成りました。
デマーガは、連続出演更新中といったところです(笑)。
そこまで愛されているのか、といったデマーガの登場回数です。ただ『ウルトラマンR/B』では亜種でありましたし、登場回数を重ねるということは扱いが可哀想になってくる傾向もあります。
特に、今回は顕著でした。

一緒に出た怪獣と共に「特空機4号 ウルトロイドゼロ」の光線で粉砕される役目です。今後だんだん噛ませ犬の役割りしか担わされなくなっていくような気がしてなりません。
けれども、そこはさすが。ただの爆発で済ましません。

ちゃんと「3体の怪獣がいた」と分かる爆発表現に、監督の愛情を感じます。なにげなこだわりが、きちんとしているから、素晴らしいです。
人類の兵器がためらなく怪獣を抹殺する一方で、ウルトラマンZというよりベリアロクさん。
今回の相手であるタッコングとキングゲスラを、正気に戻す切れ味を発揮します。つまり怪獣たちを殺しません。
こんな見た目なのに(笑)、しかもベリアル因子が入っているにも関わらず、この「いい人ぶり」です。
人類の非道さにおける対比で、ベリアロクさん本来の心根を見せた・・・は、ちょっと深読みしすぎか(笑)。
でもベリアロクさん、気分屋ではありますが、意外とハルキの意向は汲んできています。ヨウコの安い挑発にも乗ってくれます(笑)。やっぱりイイ人だと思います、魔剣ですけど。
【次回】滅亡への遊戯
本当に上手だな〜、と感心されたのは、ハルキとヨウコの関係性です。
旦那にする男は自分より強くならなければならない、とするがヨウコの腕相撲する理由でした。
警備員に配属されて落ち込むハルキへ顔を出しては、一緒にお昼のお弁当を広げる。
ハルキとヨウコで、ほんのりとした恋愛要素も漂わせる。特撮ヒーローにおける王道路線と言える雰囲気を盛り込んできます。
意外とどう転ぶか分からない雰囲気へ持っていくところが、本当に上手いです。
よく特撮番組を理解していると思います。亡くなってしまったことが、つくづく惜しいと思う気を再燃させてきます。
かつての雰囲気といえば、最後にジャグラーである正体をついにハルキとゼットさんへばらしたヘビクラ隊長。

ウルトラマンオーブを思い出させる「銭湯」という舞台設定がいい。
しかも胸にある大きな傷が、銭湯へ来た周囲の客との兼ね合いを心配させるほどです(笑)。
そんなヘビクラ隊長を脱ぎ捨てたジャグラーさんの真意が、ついに判明する時がやってくるのか。
次回、第24話「滅亡への遊戯」。
どうか訃報がないよう祈りつつ、最終回直前を待ちます。