仮面ライダーゼロワン【感想*ネタバレあり】第43話「ソレが心」#特撮ヒーローは正義を謳わない
以下、ネタバレありです、回を重ねるごとに独自解釈による偏見も酷くなっております(笑)どうか、ご了承のほどを。製作者などの敬称も略とさせていただきます。
悲しみという悪意
作品において、何を重要視するかと言われれば、キャラクターです。少々ストーリーに難があっても、キャラの魅力次第でいくらでも好感へ覆させられるものと考えています。
あまり真面目ではない作品に対する鑑賞眼であります(笑)。
けれどもキャラへの思い入れこそが、感情を揺さぶってくる。
それを思い知らされたゼロワンです。
笑わせたいという気持ちを忘れた或人は、まるで別人のよう。腹から絞り出すような声と態度が、もはや復讐の気持ちを隠さない。今の姿を見たらイズが悲しむことなど、念頭にも浮かばない心境にあります。
或人が思い浮かべるイズは、これまでの愛おしい記憶ばかり。視聴者のこちらが泣けてきそうな、出会いから表情さえ浮かべるようにまでなったイズ。悲しみを怒りへ変えずには気持ちが保てない苦しみに悶えています。
愛おしい女性を奪われたも同然な或人を、奪った滅へ向かうことを止めることなど他人が出来るものではない、と考えたくなります。
けれども止めないことは、或人をさらに過酷な運命へ引きずり込んでしまいます。
アークワンへ変身して滅を倒す一撃から、身を挺して庇った迅が爆発する前に残した言葉。
「たった一人のお父さんだから」
ヒューマギアの父が爆発から自分を庇って消えた過去を持つ或人にとって、この滅と迅の最後のやり取りがきつくないはずがない。
情愛が深いゆえに大きくなってしまった悲しみ。その反動から生まれた怒りを通り越した憎悪。感染する悪意とは、大事にしたい感情の裏返しとすれば、最初から持つべきものではないのか。
感情を宿す人類と、感情を宿すかもしれないヒューマギアは滅すべき存在。そんなアークの結論に、或人が踊らされることは辛い限りです。これまで人間とヒューマギアが共に手を取り合うよう、不屈な明るい精神で来ていただけに、見ていて苦しくなるほどです。
大事な人を奪われた怒りをもって敵を倒す、とする構図はありません。特撮ヒーロー番組が扱うテーマは、段階が上がっています。
少なくともコメンテーターが集って世間のあれやこれやとさえずる言葉より、ずっと真剣な思慮の元に表現されています。
そう考えれば、感染する悪意とは、自分も含めた多くの人たちが普段から安易に標榜する正義が源になり得ることを、受け止めたい今回です。
イズを消滅させた理由を迅に問い質されて応える滅に、今まさにある現代人の問題を体現しているように思えてなりません。
今日の不破さんと、他の方々
残すところが僅かになれば、シリアス続きになります。
そうなると、やはりというか笑いを生むキャラでしかなくなる垓であります。登場当初から感じていた予感があまりにハマりすぎて怖いくらいです。
「サウザー課長」の響きには、おかしさかありません。
或人がアークではなく自身の意で動いているデータを収集し分析した偉さはあっても「999%」という物言いは地位を失った現在では、おかしな人だなぁ〜となっています。
しかもベルトを失えば、もしかして今回が仮面ライダーサウザー最後の勇姿かもしれない。
しれないけれども、気持ちは仮面ライダーバルカンの新フォームに心が飛んでいるところが正直なところ。別にこれで終了でもいいかな、と垓ファンには申し訳ない心情となっております(笑)。
そんな垓に変わって、ザイア日本支社の社長となった与多垣ウィリアムソン。さすが渋いです、カッコいいです。さすがGAROVRの出演者です(個人的贔屓w)。
そして迅の復元に深く関わったようです。迅とコンタクトを取っていた関係性と復活できた理由がここで判明しました。
もし余裕があったら、ザイアがどうして迅を復元する気に至った経緯を、映像化して欲しい。なぜ願うかと言えば与多垣ウィリアムソンを演じる丸山智己を活躍させたい一念であります。その際のゲストとしてGAROVRの出演者を、と思いますが、まずないでしょうね、分かっています(笑)。
けれども他にもっと観たいとする、シェスタと福添副社長と山下専務のトリオは、何かしら機会が与えられないだろうか、とこちらは真面目に思っています。
今回において、唯一ホッと出来るシーンは、この3人でした。決して出番は多くないにも関わらず、すっかり馴染んだ様子を見せるトリオです。作品の底を引き上げるのは、こうしたいい味出した端役たちであれば、スポットライトを当てた作品が見たくなります。
そして、もうカッコいい姿しか見せてくれない不破さんです。でも不満はありません。
「アークはぶっ潰すが、社長は助ける」ど直球な言い回しは他の者では何ともないでしょうが、不破さんが口にすると過去の経緯が甦ってきます。
さらに唯阿と一緒に訪れた飛電インテリジェンスの社長室においてです。
「もう戻ってこないというのかよ、くだらないギャグを飛ばすアイツは」そう言って「飛電 或人」と記された卓上ネームプレートへ手を置く不破さん。
このまま或人がイズを回想するシーンへ繋がるわけですから、こちらは泣かされ通しです。
【次回】オマエを止められるのはただひとり
残すところ、あと3回に迫った前日。今回のブログで取り上げた第43話が放送される前日においてです。
SNSにおいて、仮面ライダーゼロワンは不破さんの撮影終了ともって、キャスト全員オールアップとなったことが知らされました。
これを見た時は、驚いた。
えぅ、まだ撮ってたの!?もう2週間前だよ。
通常だったら、せいぜい放送終了予定日の1ヶ月前くらいを割り込む程度。合成などの都合上、完成まで2週間前に迫った時点での撮影は危険水域に達しているとしか思えない。
どうしても、メイン監督であり最後を仕上げる杉原輝昭監督が、最後までのこだわりを捨てていないようです。
平成ライダー第1作『仮面ライダークウガ』を越えたい、と放送開始前に語っていた杉原監督。令和第1弾の仮面ライダーを任され、順調な滑り出しと思いきや、予期せぬ厄災によって「これから」という時に製作進行の中断。最も被害を被った作品となってしまいました。
撮影中断だけではなく、コロナ対策した撮影方法まで検討し直した現場は、撮影の再開当初は混乱していたように思われます。
最終局面へかかる直前だっただけに、画面作りが少し雰囲気を変えてしまっても仕方がないのかもしれません。
どんな製作状況であろうとも、出された作品が全てであり評価とは別であるとする見方は正しい。後年において初めて観る者にとっては、作品の出来が全てでしょう。
けれども、せっかく当時を知る現在の視聴者ならば、伝えていきたい『仮面ライダーゼロワン』が辿った状況です。
苦しさが滲んだ再開当初から、ヒリヒリようでいてウェットにも富んだクライマックスへ至るまでは特筆したい経緯です。
そして残る2話を演出する杉原監督にお盆休みなどないことは間違いありません。ぎりぎりまで作品へかかりっきりになっているでしょう。
変身能力を失った不破さんに唯阿、それにいちおう垓(笑)ただし予告では、仮面ライダーバルカンの新フォームが見られます。
すっかり宇宙野郎に戻った雷に、不破さんの変身に深く関わっていくであろう亡が、今後どうなっていくか。
イズが最後に残した「いつかヒューマギアが心から笑えることを」の言葉を、本当の意味で或人は思い出せるのか。
迅の最後とそれを見送る滅といい、ここまで泣かせてくるとは、令和ライダー第1弾は恐るべしです。
ところで、イズに似た姿ながら真逆といっていいアズは、小など付けられない悪魔性を見せてきます。演じている鶴嶋 乃愛が、新人女優とは、とても思えません。凄すぎます。