特撮ファンからの【八千草薫さん追悼】ガス人間㐧1号

節操なしと罵られるくらいヒロインが好きだ。

現在ならゼロワンからイズはもちろん、唯阿シェスタだって外せない。リュウソウジャーのアスナオトちょっと危ないw)なんて番組を観るテンションに欠かせない。

昨季ならR/Bからアサヒツルちゃん、ルパパトはつかさ抜きには語れない。

なんだ、なんでも好きなんじゃねーか、と言われそうであるが、そんなことはない。洩れている女性キャラもいるでしょ

例えば、タイガのカナとか、R/Bのミオとか。
社長とか母ちゃんとか、ヒロインの年齢じゃねーか、と言われそうだが、そんなことはない!

ネット配信で観る再放送『仮面ライダーオーズ』において、ヒロインの比奈ちゃんは無論であるが、店長の知世子さんもそうなのである。ちなみに里中ちゃんは良いキャラではあるが、ここで書いている者にとってヒロインとまでいかない。

つまりヒロインとは年齢関係なく、己れの欲望もといアバレキラーのごとく「ときめくぜ」な存在なのである。

だから多くなるのは仕方がない(笑)。

ここで書いているそんな人が、一時期公言していたヒロインがいる。友達と呑むたびに訴えていたこと、それは「八千草薫、いいよなぁ〜」。
ちょっと失礼な言い方になるかもしれないが、老齢に入ったここ数年ではなく、特撮ファンなら観ておきたい作品である『ガス人間㐧1号』で演じられた姿にノックアウトされたわけであります。

ネタバレ及び独自解釈による偏見が含まれる内容であることをご了承ください。製作者などの敬称も略とさせていただきます。

ガス人間㐧1号

白夫人の妖恋

1960年12月に公開された『ガス人間㐧1号』本多監督・円谷特撮監督という黄金コンビで製作された作品です。

映画界もまだ「黄金」に当たる時代です。
テレビがカラー放送を開始した年でもあります。やっとカラー放送ですから、まだ家庭においては白黒テレビが主流だったでしょう。

特撮からテレビ作品から眺めれば、1966年放送『ウルトラマン』がカラー作品です。前作『ウルトラQ』はまだ白黒でありました。

ガス人間㐧1号』が上映された頃は、カラー放送を家庭で観られる人数はごく一部に限られていたと思われます。

特撮映画から眺めても、東宝特撮初のカラーとされる『白夫人の妖恋(びゃくふじんのようれん)は1956年です。まだまだカラー化としてからの年月も浅い。

ところで、ここで偉そうに書いておりますが『白夫人の妖恋』は何かで一度くらい観たくらいの、うろ憶えです。ビデオ化はなっていたかな?レーザーディスク化にはなっていたようですが、再生ハードなんてもう持ってないぞぅ。
BDとまでいかなくても、せめてDVD・・・と思っていたら、いつの間にか発売されていたのです(驚)なに、2015年にだと!今回において知りました、ブログを始めたおかげです。では、さっそく買おっと。

いつも思っていたのですが、八千草薫はよく『ガス人間㐧1号』なんぞに出演したものだなぁ〜、と。なにせ大ヒットしているものの世間一般で評される「ゲテモノ映画」主に怪獣が登場する映画を指していたようですが、それに付随する特撮映画を加える人もまた多かったでしょう。

バブル華やかしき頃のバラエティ番組で「ガス人間㐧1号だってさ」みたいな言い草で笑いのネタにされていた時期もあります。ソフト化もされていなかった頃だとは思いますが、内容を観ていない、もしくは観ても理解できず揶揄する人間はいつの時代においても絶えません。

八千草薫は宝塚出身であり、思い切り個人的偏見で述べさせてもらえれば「すかした」立場を取れる出自であります。ファンタジーといった言葉が一般的でない当時において、悪い意味で「夢物語」と叩かれる「怪奇空想映画」に属する『ガス人間㐧1号』であります。

脚本が気に入ってくれたのかな、と思っておりました。内容の深さに演じがいを感じて、引き受けてくれたのかな、と。
ただ、そこは特撮を要する現場です。普段とは違った演技を求められるはずです。見えないものに向かって、あたかも存在するかのように演じるシーンは恥ずかしかったと述懐する俳優もいるほどです。

あくまで推量になりますが、『白夫人の妖恋』を踏んでいたことが『ガス人間㐧1号』への出演してもいい動機になったのかもしれない。そんなことを妄想すれば、もう購入せずにはいられません。

どちらもファンタジックでありつつ「恋の狂気」を描いている点は共通するところです。

美女とガス人間

見出しの付け方が映画『美女と液体人間』から被せております。そんなの解説いらねーよ、という方々が多いことは承知しております。しかしながら、へぇーそうなんだ!とする方だっていらっしゃるかもしれない。そういう方のために、アフィリが貼れるわけであります(笑)

今年からブログを始めたニンゲンからすると、画像掲載のルールがどこまで適用されるか、わからないのです。番宣の素材と思しき画像を使用したら、警告とまではいかないものの不安視させるような「?」みたいなものが出てくる。

もう、ホントに売買用の画像ではないと「超安全」ではないのか!慎重勇者の考えに頷くことが多いここで書いている人は、画像といえばアフィリと決めにかかっている状態です。

今後、改善できれば良いですが・・・。

話しが逸れましたが『美女と液体人間』と『ガス人間㐧1号』は同系統にあります。それは本多監督作品そのものであり、円谷特撮監督はあくまで本編フォローでしかありません。
怪獣や戦記ものにおいて本編班は、特撮場面の下支えといった側面は付き纏います。見せ場はやはり特撮班が持っていく。

美女と液体人間』に『ガス人間㐧1号』は、紛れもなくドラマが主となります。役者の存在や演技がそのまま作品に直結します。

ガス人間」を演じるのは土屋嘉男(つちや よしお)。毅然とした紳士から悪漢まで、なんでも演じられる俳優でした。黒澤監督から「特撮なんて出るな」と言われたとか、言われていないとか。ともかく世間一般で認められる映画への役がもらえる立場にありながら、顔の出ない宇宙人役を買って出てくれたりと素晴らしい俳優さんです。
もし土屋嘉男という役者が特撮に関わらずにいたら、特撮本編における先鋭な表現はその速度を鈍らせたかもしれません。

そんな土屋嘉男ガス人間を演じるのですから悪くなるはずがありません。

そしてガス人間は社会の激動に巻き込まれたというわけではなく、安定した社会に自身の存在が見出させないことから事件に至る話しなのです。

ガス人間㐧1号』は現代に通じるテーマを扱っているわけです。

ガス人間となる水野。ただ平々凡々とつまらない仕事で送る日常にうんざりしていたせいで、つい悪い大人の甘言に乗ってしまうわけです。己れの研究成果を確認したい博士にそそのかされて人体実験を受けた結果、身体をガス状に気化できる能力を身に付けます。
当初は自分が人間ならざる存在へなったことに憤りますが、程なくして得た能力に酔うようになります。カノジョためなら何をしてもいい、人だって殺しても構わない。

純粋とするか、ただの自己陶酔とするか、捉え難い愛情は少なくとも身勝手です。けれども水野なる、こうした手前勝手な見本のような男はいつの時代でもいます。

こんな厄介な男を夢中にされる存在は、やはり美しい女性です。通常の生活を過ごしていたならば手が届かないような気品も備わっていなければいけません。そして付け込まれるだけの陰影も含んでいなければいけません。

ガス人間である水野が献身を注いだ女性の藤千代。困窮した日本舞踏の名門である春日流における美しい家元としての業が、奇怪な能力を有する男を利用させてかもしれない。だが、結局は情にほだされたか?それは愛情と呼んでいいものだったのか?劇中からその心情を断じるには、所詮は自分は男であることを痛感します。水野の気持ちは読めても、藤千代の心情をはっきり述べることには躊躇ってしまう。

ただ藤千代という役柄は演技力だけでは存在が立たない。まさしく八千草薫が従来から備わっている魅力に加えて、これまで磨かれてきた名演があればこそなのです。

藤千代が披露する日舞のタイトルは「情鬼」大人でもどれほどの者が理解できるか(自分も自信はない)不明なほどの情念が描かれた作品なのです。

優しい?その一言では済ましたくない

2019年10月24日、八千草薫さんは膵臓癌によって鬼籍に入られました。享年88歳です。

訃報を知らせる数々のネット・ニュースで語られる人柄は「上品で優しい人」それは間違いないことなのでしょう。

けれども1947年以来、その死の直前までの72年間も女優として一線に立ち続けた姿には、優しさより「強さ」を感じます。穏やかな祖母役が多かったせいか、近年においてイメージで語られるばかりでしたが、ひと昔の記事などには「演技において厳しい」時には「怖いほど」だったそうです。

癌の闘病とは壮絶なものです。目の当たりにした体験から、自分は苦しさを覚えます。

特に体力ない老齢では想像を絶する「しんどさ」があったのではないか、と思います。
けれども生涯その最後まで、世間が抱く「穏やかな優しさに溢れる」ままの姿を見せていたことに「強靭さ」を感じずにはいられません。

もし八千草薫の祖母役しか知らないのであれば、出演した作品は数あれど『ガス人間㐧1号』を何を差し置いても観て欲しい。ここに八千草薫の女優としての本質が窺えるからです。