ネタバレ感想【アラーニェの虫籠】#誰にでもススメない映画ですw#マタンゴは白黒で

2020年5月7日

たった1人で制作されたアニメーション映画!
なんと魅惑的な響きです。有名どころの鉄板としては、新海誠監督でしょう。『ほしのこえ』友達がもう夢中でした。自分はおまけの『彼女と彼女の猫』が妙に気に入りました。今でもお気に入りです。監督自身が演じたバージョンが好きです。

では新海誠をもの凄く好きかと言われれば、それほどでもないです。けれども全ての作品を観ています。待ち望むほどではないのに、必ず手を出さずにはいられない。好き嫌い、良い悪いを越えてチェックさせずにいられないクリエイターは凄い存在です。

もし語るとしたら、それは己れの趣向をどれくらい混ぜての評価なのか。気をつけたいところであります。

ふらりと寄ったレンタル店で、1人で制作されたとポップにひときわ大きく書かれた文字に釣られました!もしかして未来の新海誠になるか、といった先物買いの気持ちも多少は働きました。

けれどねぇ〜、なんかカバーが不気味。もう絶対にホラーだわ、これ。でもここのところヒーロー番組で感動しすぎて、正道へ感性が傾きすぎている。すると何となく変なものにしたいというか、真っ当じゃないものにしたくなるというか。
感性のバランスを取りたい気分だったから。要は、たまたま観ても良い心境だったということです。

とてもじゃないですが、気分真っ暗な際には観ようとは絶対に思わない代物です。

以下、ネタバレが含まれますことをご了承ください。製作者などの敬称も略とさせていただきます。

ホラーといえば!と自主映画

まずこの映画を観る前の心構えとして、ここで書いている人の感性を述べます。これくらいの趣向があっての感想だと参考になってくれればと思います。

虫は好きですか、と言われれば、普通です。カブトムシやクワガタは好きですが、刺す系はイヤです。特に無断で家へ上がり込んでくるようなのは虫でなくても嫌いです。頭にきます。そういった点では虫は叩き潰せるからいいですね。

ホラーは、と言われれば、好きではありません。わざわざ怖い想いを買ってまで求めはしない。けれども、ドキドキするような緊張感は好きです。サスペンスなら、むしろ進んで手に取りたいほうです。それが行きすぎてホラーになっていた、ということはあります。

コワい、そうです、ホラーなんかまっぴら!となった作品があります。昔の作品でありますが、これになります。

『マタンゴ』1963年公開のゴジラでお馴染み本多監督・円谷特撮といった黄金コンビです。古い映画であり、なんだそれかと思われるくらい有名な作品であります。
しかーし、である。我が原体験から述べさせてもらえれば、普通にそのまま観てはいけない。カラー作品であるが「白黒」といった見方を提案したい。
色のない画面で観てもらいたい!
流れ着いた孤島でバケモノがにゅぅといきなり出現したりするシーンもコワいが、なんといってもラストである。1人だけ島から脱出に成功した青年が鉄格子の中から振り返って見せた顔は!!!
うぎゃー、!を三つ並べても足りないくらい、マジで布団の中で震えるという体験をしました。だから後年になってカラーで見た時は妙な安心感を覚えたものです。そして作品がいかによく出来ていたかを知るのです。
今ではサイコーの1本です。たまに無性に見たくなる作品となってます。ホラー扱いしていいか疑問になるところです(笑)

あー、でも「貞子」は観ない。あの女の絡むやつはコワそーでヤダ(笑)

話しを戻します。
自主映画は観たことがありますか、と言われれば、あります。「ぴあフィルムフェステイバル」や映研の上映会など、一時期はハマっておりました。要は自分でも撮ってみたいと考えていた頃です。結局は頓挫しました。映像を作成するというのは大変だと思いました。
けれども、ここ近年において個人が映像制作するための充実ぶりは目を見張るばかりです。パソコンさえあれば、といった具合です。

じゃぁ、やってみろと言われてたら、出来ません。そこには気が遠くなるような作業があり、また創作に対する自分自身の才能を信じなければならない。作り続けていく途中で襲ってくる「出来への不信」にめげてしまいがちです。

況してや、1人で全てやりきってしまう。それだけで大したものだと思います。
この作品に対する目はかなり甘くなっているのかもしれません。

アラーニェの虫籠

2018年8月に公開された『アラーニェの虫籠』。
アニメとしての作業に演出、音楽の全てをこなした「坂本サク」超絶絵師なる肩書きが付いております。フリーのアニメーション作家のようですが、VFX・CG・音楽といった幅広いプロとしてのキャリアを既に積んでいます。

制作は坂本サクただ1人ですが、当作品においてはプロデューサーというもう1人のスタッフが加わっております。世に出す役割を担った「福谷修」ホラー制作する監督であり作家であります。

途中でスタッフを付けて完成させるかどうかの話しも出たようです。プロジェクトとしての動きはしていたようです。

事前の期待、そして感想

自主映画の良さは作家性がもろ出てくるところ。予算どころか技術もないくせに、撮る側の熱い想いだけが先走って観客など置いてきぼりが、なんと言っても魅力です。まともな作劇など、商業としているプロに敵うはずもありません。

いかに自分の主張を押し通すか。一般には相手にされないような作品になるか。『アラーニェの虫籠』には、それなりの破天荒さを期待しておりました。

主人公は女子大生の「りん」どうやら家賃を最優先で不動産屋にいいようにやられて、舞台となる不気味な巨大集合住宅に住むようになったらしい。自分の部屋に辿り着くまで、きみの悪い昆虫やら、それを操るような得体の知れない少年やら、骨が出るほど掻きむしっている女やら、ベビーカーを押して徘徊する若き主婦らしき者やら。

普通なら出ていきそうですが、りん自身が何かの薬を常用しているので現か夢か正常な判断ができるのかと迷わせます。

1人で制作しているせいか、映像上における人物の動きがたどたどしくなる場面も散見できます。それがむしろ得体の知れない空気のなかに合っている。

事件の背景も高度成長期における環境問題から端を発したと思いきや、戦中の人体実験まで原因を遡らせる。ミスリードも効果を上げるため取り入れることを忘れない。

この作品は冷静な計算のもとに作劇されているような気がします。

自主映画としての趣きよりも、1人で制作という条件をうまく踏まえた商品としての出来が優っているように思われます。プロとしてのキャリアが長いせいか、突き抜けた作家性までは感じません。
新海誠の『ほしのこえ』と、志ざしは違うようです。

しかしながら一般で放送できる内容でもありません。
りんの前に、3人の男性が現れます。救世主として役割を果たすように思わせて、あっさり退場させる。誰もが怪奇に対し、まるきり無力なのである。
そして、りんが己れの過去と向き合うなかで、世界は破滅へ陥っていく。

1人で制作されたアニメだからとマニア心をくすぐるような勧め方より、たまにはホラーでもといったノリのほうが良いかもしれません。

謎は謎のままで

鑑賞後にタイトルになっている「アラーニェ」とは、どんな意味なのか。知らん単語なので調べてみたところ、ギリシャ神話に出てくる少女「アラクネ」がダンテの「神曲・煉獄篇」において蜘蛛と混合した姿に付けられた名前らしい。地獄を這い回っているそうです。
おぞましさは、まさにホラーという感じです。

きみ悪い虫も死体も出てきます。けれども思ったより見せないようにしていた印象です。むしろ映像として、おどろおどろしさはあるものの綺麗です。描写の刺激より展開の衝撃に重きを置いています。

物語りの進行において明快な解釈を許さない。そうした視点で眺めれば、この作品はホラーの王道を行くストーリーです。

ですから公式において「隠された謎の検証」として、自ら見解を述べていることに隔世の感があります。複雑を越えたまるきり意味不明というわけでない謎を製作者側から説明しています。
これこそ時代なのでしょうか。個人的には謎なら謎のまま、考察する楽しさを覚えるタチなので、別に要らないよと言いたくなりました。

作品以外における不平を述べさせていただきました。けれども謎解きしてくれるから観てもいい、という方もいると思います。難しいものです(笑)