田口清隆監督【ウルトラマンギンガS】第12話『君に会うために』ニュージェネと呼ばれる原点

お笑いは難しい、というか、よく解らない。
芸人が披露してくるものは無論のこと、世間でおもしろいとするキャラも、ちっともである。自分ももう大人だから、皆が楽しんでいるようであれば調子は合わせておく。合わせるが、なぜ笑えるか理解不能である。

これが美少女なら神秘的な存在として昇華されるだろうが、自分はただのおっさんである。しかも笑わないわけではない。声を挙げてなどは滅多にないが、吹き出すことはある。

緊張感に満ちたなかで、ふともたらされるお笑いシーン。笑う時は、こうした場面ばっかりである。ギャップの激しさがなければ笑えなくなっているのかもしれない。そう自己分析している。

だから「笑い系」と判断して逃してしまうことも多いかもしれない。

以下、ネタバレあります、独自解釈による偏見もあります(笑)どうか、ご了承のほどを。製作者などの敬称も略とさせていただきます。

【田口清隆】ウルトラゾーン

関東ローカル局で放映されていた『ウルトラゾーン』2011年秋から翌2012年春まで、23回に渡って放送されました。
再放送を中心とした『ウルトラマン列伝』開始の後を追うようなタイミングで始まりました。コンセプトは「大人向けのウルトラ」ということで、ウルトラのキャラクターを使用してシュールな笑いを取るといった感じです。

ここで書いている人にしてからすれば、まず合わない。視聴者を選ぶ番組に思えます。ヲタでありながら、一部のマニアしか解らないようなネタで押し切られることは、あまり気分良く思わない。内輪受けはほどほどにして欲しいと常日頃考えているタイプです。本道のウルトラマンが製作されないで、ネタ的な番組を立ち上げている。ならば、なんとか予算を一本化して新作のウルトラマンを立ち上げられないものか。そんなことを考えていたりしてました。懐かしい思い出です。

ところが、この『ウルトラゾーン』普段は特撮など見ない友人が受けている。あれは笑えると好意的なご様子である。少しマニアックな笑いを追い求める友人だったから、どストライクだったか。けれども聞いていくうちに、会社内でもけっこう評判だと言うことだ。

ただ自分の好みに合わなかっただけ。一般的にはおもしろい番組となっているようだ。

最初に少し観ただけで止めていたが、放送時間が合ったことでテレビを点けてみる。やっぱり片手間で観る程度だ、と思いきや、キングジョーが登場するエピソードが明らかに自分が持っていた番組に対する印象と違う。まさしく特撮ドラマ。重厚な展開に背を正して観た。
最後の攻撃命令』の前編が終了すれば、スタッフが誰なのかと気になって仕方がない。脚本・監督 は「田口清隆」とある。まったく知らない名前ではない。『大怪獣映画 G』と『長髪怪獣ゲハラ』を撮っているくらいは聞き及んでいる。アマチュアとは言わないが、セミプロぐらいの演出家という認識であった。
何にしろ、己れの不明を反省しなければいけなくなった。後編を観終われば、田口清隆への認識を完全に改めた。スタッフとして連なる場合は要チェックとなった。

余談ではありますが『ウルトラゾーン』を気に入っていた友人は、その後における『ウルトラマン・シリーズ』へは無関心です。こう考えてみると、自分は大人になりきれない部分が多く残っているのだなぁ、と捉えたりしています。それが良いか悪いかの判断は苦しむところではありますが(笑)

【ギンガから】ギンガS

ようやくウルトラマンの新作が、2013年の7月から始まります。

ウルトラマンギンガ』もう嬉しくて、などとはならず、むしろ将来を悲観したものです。スラークドールズを使用しての変身がさほどカッコいいとは思えず、ともかくグッズ収益へ邁進するしかない現状に痛々しい気がした。世界設定もミクロとしか言いようがない規模であり、特撮場面も山中にてといった調子である。ギャラクシー大怪獣バトルから変わらない、作り込みはない舞台で巨大な怪獣や星人が暴れ回るのみ。これからの円谷特撮はずっとこの調子となるのであろう。

製作状況を見て取れる大人になっていれば、文句の矛先は零落させた円谷プロの跡継ぎ経営陣だ。スタッフはやりきれない環境で製作を進めていることは明白だった。

ところで作品に対して、ここまで散々ネガ的に述べてきたが、楽しんではいました。ギャラクシー大怪獣バトルもそうだったが、やっぱりおもしろい。もちろん未熟な若手俳優を中心に展開するから、目を覆いたくなるようなシーンもあったが、それこそ特撮番組の醍醐味である。出演者が実力を付けていくさまをまじまじと見られるのは、特撮ヒーロー番組くらいだ。

そして、タロウがスパークドールズから解き放たれて復活したシーンは感動した。やはり作品は作り続けられることが大事である。

ウルトラマンギンガ』が終了すれば、次回があるなどとは考えていなかった。翌年に続編として『ウルトラマンギンガS』放送の告知には、まったく同じ感じで製作されると思い込んでいた。

【きつかったに違いない】ギンガS

ウルトラマンR/B』において、蓄積されたミニチュアがあるからやりやすくなったというインタビュー記事があった。
円谷に限らず、特撮は使い回しが基本である。この分野こそシリーズ化が望まれるものはない。即ち『ウルトラマンギンガS』においては並大抵でない苦労が偲ばれる。

続編ときたからには、同じような製作体制でくると思ったらである。『ウルトラマンギンガ』でベテランスタッフの多くが離れる。メインスタッフは、ほぼ入れ替えである。
そして逸話として特に印象深かったのが、この予算でやり切れるかとプロデューサーに問われた田口清隆は「人力でなんとかします」と答えたそうである。
ギンガSは前作の世界設定を持ち込みつつも、映像は激変といっていいくらいだった。平坦な光景ではない。ミニチュアで街並みが組み上げられ、模型の車両が地滑りしては爆発する。CG合成ありきではない、紛れもない特撮映像だった。もう二度と採られないと思っていた撮影方法に、新たな技術を組み込んだ、まさに待ち望んでいた円谷製作の怪獣番組であった。

ウルトラマンだからといった理由ではなく、純粋に作品として熱狂しだしたのは『ウルトラマンギンガS』からであった。自分にとっての「ニュージェネレーション」はここからである。

【ここが新しさの原点】君に会うために

ウルトラマンギンガS』は、全16話。2クールに満たないばかりか、途中で2ヶ月のインターバルがあるなど、決して製作体制は万全とは言えない。まだ試行錯誤が垣間見えていた。

放映として後期に当たる12話『君に会うために』これが田口清隆が担当する最終エピソードとなる。

ギンガから引き続きのキャストであり、アイドルになるという夢を叶えた久野千草。その親衛隊リーダーとして、アイドルヲタ芸を熱狂的に披露しつつも礼儀正しい丹葉さん。人物とせず名前で書いたのは、この丹葉さんは宇宙人だったからである。
正体はメトロン星人ジェイス。地球侵略でやってきましたが、お馴染みの幻覚を起こして人々の信頼関係を壊す作戦としてばらまいたサイリュウムが機能しない!そうかぁ、ヲタにはかつて殺人作用にまで及んだ機能は通用しないのかぁ、といった時点で笑ってしまいました。

そうなのです、この回で自分は大受けしておりました。もしかしてウルトラマンの全エピソードに限らず、2010年以降において最も笑かしてもらえた回なのです。

このメトロン星人ジェイスを演じた「しおつかこうへい」が、これ以上にないくらいにハマり役。声優がやっているほどなので、「いい声」で相当ふざけたことをまじめに語られては笑いが止まりません。

おいおい、アイドルに入れ揚げて母星の指令を破っていいのか!うん、いいよね、平和への指針がここにある(笑)

ジェイスに私怨から襲撃してくるガッツ星人ボルスト。ここで良いところは、星人で一括りにすることなく、それぞれへちゃんと名前を与えていること。相手が地球人より高等な知性を持つ星人とするならば、各々が個性を持っているだろう。そうした点を明確にするようになったことは、特撮ヒーロー番組として前進した一面である。

ボルスト千草を人質に取ったところで、ジェイスの人間体である丹葉さんが登場で見せた格好が「快傑ズバット」早川健そのもの!初見において、好きなんだね〜と思ったが、後に田口清隆がメインで仕切る『ウルトラマンオーブ』である「クレナイ ガイ」を生む起因を見るようで、振り返ってみればおもしろい。

本編はひたすら「笑かしてくれる」が、特撮へ目を向ければ「凄い!」の一言である。ミニチュアビルへの写り込みや、見上げるタイミングを計っての特撮場面への切り返し、ぶつ切りではなく合成によるワンカットなど「新世代の特撮監督」と言われるだけある。
しかも本篇監督兼任の良い例だろう。人間や等身大の星人がやり取りしている背景として、ウルトラマンビクトリーインペライザーの攻防が決着みるまで長々と繰り広げられている。まさしく「新世代」に相応しい演出だった。

最終決戦においては旧作を意識した夕陽で彩りながら、長回しでウルトラマンと怪獣の対決シーンを描くなど、観るは易し、けれども撮るは困難な映像をテレビ番組で提供してくれた。

「ニュージェネレーション」これを強く意識させられる共に、シリーズ続行を願わずにいられなくなったのが、ウルトラマンギンガSの第12話なのであります。

ところでこの「君に会うために」において、夕陽をバックに巨大化したメトロン星人ジェイルがサイリュウムを両手にヲタ芸を披露します。これこそ『ウルトラゾーン』の恩恵かと思います。ならば見直すかという想いが頭へ過ぎりもしますが、でもこうしたギャグは本篇でやってくれたからこそです。やっぱり観返したところで、笑いが増幅するとは思えません。感性はそうそう変われないのです(笑)