【ネタバレ感想】バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)

あまり取り上げたくない映画である。
それは作品どうこうでなく、ブログにする側の問題である。ここで書いている人の力量で、書けるのか?と、思ったところで、よくよく考えた。これまでだって、きちんと表現できていたかと言われれば、自信なしである。

とはいえ、実はストーリーはシンプル。けれども観客によって解釈が分かれる演出法。なんとも厄介な映画です。それゆえに凄い!とも言えます。でもおかげで今回ほど弱気な記事はないと自負しております(笑)

以下、ネタバレありの、独自解釈による偏見もありです。どうか、ご了承のほどをよろしくお願いします。製作者などの敬称も略とさせていただきます。

【バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)】監督

2014年10月にアメリカで公開されました。アカデミー賞など数々の受賞を果たしております。華やかな受賞歴のわりには観客動員が今ひとつです。同じくアカデミー賞の『グリーンブック』など世界興行収入が「$318,849,272」に対して、こちらは「$103,215,094」時期や集計法などから正確とは言い難くても、動員数において『バードマンあるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』のほうがだいぶ少ないことは間違いないと思われます。

監督は、アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ。ここに至るまでのフィルモグラフィは評論筋に絶賛されるものの、観客動員に結びつかない。深刻すぎる作柄のためと分析されています。
評論家に高い人気があっても、観客には愛されない。こうした状況をまるきり逆にした境遇が『バードマンあるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』の主人公だと言えます。

監督の心情が吐露されている、といった目で観れば、また面白いと思います。

【バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)】気になる俳優と長回し

主人公リーガンは、かつてスーパーヒーロー『バードマン』を演じた人気俳優だったが、現在は60歳すぎの落ち目ハリウッド俳優である。
このリーガンを、マイケル・キートンが引き受けたことが驚きです。自身が『バッドマン』で人気を得た経歴であれば、嫌がっても不思議でないと思います。逆を返せば、これ以上に望むべくもない主人公を得られたわけです。このキャストを得たことで作品は、ぐっと上がりました。

そして主人公リーガンの娘役が、エマ・ストーンなのです。『ラ・ラ・ランド』成功の立役者と、今だからこそ言える(笑)配役をしていたのですね。ともかく実力者揃いです。

この映画における特徴として「長回し」撮影が挙げられます。非常に演技力を求められるカメラワークですから、演者が上手いを前提で揃えたのでしょう。それでもNGが生まれやすい長回しをやめろ、と偉い方から横やりが入ったくらいです。

それを作品全体で1本の長回しで見せようとした。まさしく野心作なのが分かります。

ところで、ナオミ・ワッツも出ているのか、と個人的に食いつきました。『キング・コング』に出演していたから、ただそれだけなんですけどね(笑)

【バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)】ストーリーと解釈

ストーリーの基本は至って、至ってシンプル。ヒーローとして名を挙げた役者が落ちぶれた今、今度は演技者としての成功を求めブロードウェイの舞台を製作・出演を決める。さまざまなトラブルに見舞われながらも公演に向けて奮闘していく。

ただ明快な答えを与えない作劇は為されています。。
代表的なところでは主人公リーガンが実はバードマンばりの超能力者を有していた、かと思いきや、本当はただの妄想にすぎなかったのではないか。けれどもそうなれば、ラストに娘がいなくなった父を求めて窓へ駆け寄った時に目線を上にして微笑んだのは、なぜか?

虚構が並行して進むため、独自の解釈を必要とします。真実ははっきり示されません。結局は難解な部類に入る作品なのでしょう。

ただ映画の原題『The Unexpected Virtue of Ignorance』邦題においては『無知がもたらす予期せぬ奇跡』ですが、本来の意味は『無知がもたらす予期せぬ美徳』と知れば、作品の見え方も多少は開けてきます。

壊れた家族に、社会的にもどん詰まりな存在である主人公。老齢といっていい歳でありながら、なんとか道を開こうとがむしゃらに突き進む。考えていたら出来ない、ただただ足掻くことでもたらされた妻や娘との心からの交流。それは奇跡というより、主人公の裏付けないまま苦闘をしたからこその「美徳」。

中年とするには歳を取りすぎている独りの男が、悲哀に彩られた滑稽さを以って「予期せぬ美徳」を行なった。題名に記されているテーマは他の解釈を許さないほどしっかり描かれてはいる作品なのである。