【ネタバレ感想】アニメ『どろろ』最終回を観終えて

第一回の放送を観た際「本当にやるんだな」と変に心配になったものです。

簡単にネットで発信できる環境ゆえに、問題ありとすぐ表明できてしまう時代。仮面ライダーの数が多すぎて子供が憶えられない、と文句が言える状況である。この作品ならば、身体の部位に支障を抱えた障害者へ配慮していない、などとしたり顔で述べる者がいてもおかしくない。または言いたくて目を光らせている者もいたかもしれない。

センシティブな要素を含んだ『どろろ』を最後まで路線変更もなくやりきれただけでも良かった。世の中、どこでどう横槍を入れてくる輩が出てくるか知れたものではないからである。

以下、ネタバレ及び独自解釈による偏見(笑)が含まれますことをご了承ください。製作者などの敬称も略とさせていただきます。

【どろろ】最終回

主要キャスト

【キャスト】
百鬼丸(ひゃっきまる):鈴木拡樹
どろろ:鈴木梨央
琵琶丸(びわまる):佐々木睦
醍醐景光(だいごかげみつ):内田直哉
多宝丸(たほうまる):千葉翔也
兵庫(ひょうご)、陸奥(むつ):松田健一郎、棟方真梨子
寿海(じゅかい):大塚明夫
縫の方(ぬいのかた):中村千絵

【感想】百鬼丸と多宝丸

鬼神に喰われた身体を取り返すために戦い続ける兄と国を護る後継ぎとしての使命感が何より先に立つ弟。前者が百鬼丸であり、後者は多宝丸。炎で巻かれる城で最後の決戦とばかり刃を重ね合う。

結局、この兄弟。どちらが幸せだったのだろう。

悲惨さでは、弟の多宝丸が兄の百鬼丸に及ぶべくもない。

身体がないため感覚さえが得られないまま、ただ生きているだけだった百鬼丸。拾い育てた寿海が陰惨な戦いに身を投じていることを確認すれば、命を助けたことを後悔するほどである。
鬼神という化け物を狩るだけに生きる。関係を築けたといえば、どろろたった一人だけ。だが、そのたった一人が百鬼丸を悪鬼に堕とすことなく、身体を取り戻していくなかで生きていく支えとなる。

比べて多宝丸は次期当主としての環境に育ち、命を捧げる腹心が二人も付いている。領民の状態を気にかけるほど立派に成長もした。申し分ない後継者だったはずが、逆に仇となってしまった。人脈も財も持っていただけに失うばかり。母は優しいが、失った兄へ想いがいってしまっている。与えられた後継者としての責任感と、満たされなかった部分へ心を砕きすぎたせいで悲劇を招いてしまう。

持たざるゆえに未来を紡ぎ、与えられていたゆえに刹那の感情に捉われた。百鬼丸多宝丸兄弟の相対的な運命が、この作品において最も感慨深かった。

父であり百鬼丸を鬼神に喰らわせた張本人である醍醐景光が最後に悟るシーンがある。百鬼丸に跡を継がせていれば、望んだ国の繁栄が得られたのではないか、と。
醍醐景光もまた決して非道な人物ではない。むしろ領民を思い遣る好人物なのである。もし暗愚な領主なら、領民など絞るだけ絞って捨てるだろう。自分の子を捧げるなぞせず、犠牲を家臣なり領民に求めたはずだ。
ただ強面な態度の下にある性情が、あまりに弱かった。どうにもならない国の窮状にすがってはならないところにすがってしまった。結果は出ずとも、最後まで自身の手で乗り越えるべきであった。運命を他へ委ねる危険さは、物語の外にある我々にも当てはまるところだ。

もし百鬼丸多宝丸という優秀な二人の息子を控えさせていたならば、醍醐の国の未来は悪いものにならなかっただろう。天下を獲るという野望もまた現実味を帯びたかもしれない。少なくとも兄弟が相争う最悪の悲劇は避けられたはずだった。

【感想】どろろ

作品のタイトルにもなっている、どろろ。特に当初は百鬼丸が言葉を発しないため、ストーリーを語る役を全て担う、まさに主役であった。
こしゃまくれた性格は過酷な生活下を潜り抜けるためだ。それでも背中に財宝の在り処が描かれたいたため裸を晒されたことで泣き崩れる女の子。普段の明るさに誤魔化されるが生きるために男の子としての姿をしなければならない、かわいくも悲しい存在であった。

百鬼丸は、あと取り返す箇所が腕と目となった頃に執着心が激しくなったように思えた。時を同じくして「どろろがいればいい」と口にし出している。何が何でも取り返そうとする気概は、どろろを見たい、腕にしてみたいという想いから生まれたものではないだろうか。だから身体の全てを取り戻した時に、腕の中にあるどろろへ真っ先に「きれいだ」という言葉が出てきたのだろう。

人としての道を歩き直すべく一人で旅立つ百鬼丸。待つというどろろもまた両親が残してくれた資金を頼りに道を模索していくだろう。しかし二人が向かう時代は戦国の世。決して安楽な道が待っているわけではない。どろろが思う侍を頼りにしない国造りは困難が待ち受けているに違いない。
でもだからこそ百鬼丸どろろのもとへ戻ることになるだろう。ラストにおいて成長した二人が再会することは必然と思える。

【総評】どろろ

2019年1月から6月まで、2クールに渡っての放送となった『どろろ』。
前回のアニメ化が1969年というから、50年ぶりときた!改めて手塚ブランドの凄さを思い知らされます。
今回のアニメ化において、旧作を尊重しつつも、扱いに慎重を要さねばならない設定はスタッフの苦労が偲ばれます。24話という長めの期間に様々なエピソードを差し込んだことで、若干ダレたように取られがちかもしれませんが、深みを与えたように思います。むしろ最後の方が多少駆け足気味になっていた感はあります。

けれども「和を舞台にしたダーク・ファンタジー」として、見て欲しい作品の一つとして数えたい。そして成長したどろろ百鬼丸が再会する辺りの話しが作られないかなと、難しい夢を見ています(笑)