【ネタバレ感想】ビルド NEW WORLD 仮面ライダークローズ

『仮面ライダービルド』の最終回は悲しい。
主人公たち、戦兎万丈は救った世界では異物の存在。かつての仲間たちからすっかり忘れ去られ、二人だけしか認識し合えないなかで生きていく。
最終回に、戦兎万丈がバイクで晴れやかな顔で走っていかれれば、なんとも言えない気持ちは尚更である。

時代が時代なら、同人即売会を待つしかない(笑)。この寂しい気持ちは二次創作で癒すほかないのである。

しかしんながら現在の東映はやってくれる。自ら二次創作をしてくれる、というのが「Vシネクスト」の役割と自分は位置付けている。
この東映オリジナルビデオシリーズにおいて、他に何が楽しみかというと「メイキング」が観られるところである。下手すると、本編よりこっちのほうを楽しみにしている、ここで書いている人なのある。

以下、ネタバレが含まれます。独自解釈も酷いかもしれません。どうか平にご容赦のほどをよろしくお願いします。製作者などの敬称も略とさせていただきます。

【仮面ライダークローズ】概要

「ニチアサ」でやれないこと

脚本はテレビシリーズそのままに武藤将吾が担当。
監督は、山口恭平。『仮面ライダービルド』はパイロット監督ではありませんが、最多で演出しています。『ビルド NEW WORLD 仮面ライダークローズ』撮影した後に『平成仮面ライダー20作記念 仮面ライダー平成ジェネレーションズ FOREVER』へ雪崩れ込んでいます。若手のなかで期待が高い監督です。

すっかり『仮面ライダービルド』の世界に馴染んだスタッフそのまま持ち込んだ『仮面ライダークローズ』です。
撮影に入ったのは、テレビ本編終了後すぐみたいです。出演者たちの声を聞けば「4日後」くらいの感覚です。テレビ最終回はちっとも最終収録という感じではなかったみたいです。

だから「ニューワールドの創造」という思い切ったラストを用意できたのかもしれません。けれどもおかげでビルドは難解だったという視聴者の声も上がっています。ヲタたちが満足する(笑)ハードな終わり方は、年齢層を選んでしまうようです。

ただストーリーや展開が難解だったとしても、そこは日曜日朝という低年齢層にも配慮しなければいけない時間帯です。平成仮面ライダー初期の描写が現在では困難とされることも多分に生じています。

テレビ放送ではない媒体で出来ることを、まず優先してストーリーを組み立てているのではないか。今回のビルドに限らず、「Vシネクスト」に始めとするスピンオフに共通している言えることのように思えます。

ビルド NEW WORLD 仮面ライダークローズ』において、制約に捉われず踏み込んだなと思ったところは幾つかあります。

仮面ライダーは救えない

コミック『仮面ライダーSPIRITS』にてこんな描写があります。
1号ライダーがある幼い兄弟を助ける。けれど兄のほうがなじってきます。どうやら両親が殺されてしまっている。仮面ライダーの手が届かないところで悲劇が起きてしまっていた。

仮面ライダーは万能ではない。一個の人間がただ戦闘能力を与えられたにすぎない。

この作品においても、その点が生々しいまでに描かれています。
仮面ライダークローズが近くまで迫りながら、通り過ぎられてしまった今回のゲスト・ヒロインである由依。教え子であった子供達は連れ去られ、新世界においても昏睡状態。由依自身は実験体にされた挙句、欠陥があったのか拷問の末に爆死。新世界ではやけどの負った身体のままに甦ったようである。

子供の頃に観たら、トラウマになりそうな一連の事情です。仮面ライダーの存在意義が揺らぎます。言葉で流さず、描写は抑えているとはいえ映像で説明されればインパクトが残ります。

幼い年齢層も多く目にするだろう視聴媒体では踏み込めない場面でした。

裸の男

今回の敵は、エボルトの兄だというギルバスというヤツです。つまり地球外生命体というものです。

快楽主義者なので、取り憑く先が戦兎よりテレビに映る変なダンサーへ向かいます。柿崎 悟志かきざき さとしという方で、肉体美を誇る妙な仕草が濃いキャラへと仕上げられております。
演じるのは、進藤 学(しんどう がく)。俳優だけでなく、美容アドバイザーなるものもやっております。デビュー作の『超星艦隊セイザーX』は個人的に大好きな作品であります。有名どころとしては『海賊戦隊ゴーカイジャー』の敵幹部バリゾーグでしょうか。とても真面目な役を演じられておりました。

が!ここでは、まるでタガが外れたような怪演ぶりです。
素肌にジャケットを羽織っています。いきなり上半身を露出させます。健康的でないどころか、扇情的な脱ぎっぷりです。不道徳としか言いようがない存在感を示しております。

たぶんこのままテレビで流したら、間違いなく抗議はきていたでしょう。もちろん妙に喜んでいる視聴者もいるにはいるでしょうが、その方々もある意味問題です(笑)

ビルドは変身しない?

主人公の戦兎が変身しないなんて、これこそ・・・と言いたいところですが、平成仮面ライダーでは当たり前でした。しかもビルドは出てきます。ギルバスこと柿崎が変身で、クローズとバトルです。こういったところはバランスなのでしょう。

これは救済の物語

エボルト

テレビ本編におけるラスボス、エボルト。ためらいなしの非道ぶりを見せていました。どこか屈折したキャラでした。話す言葉に本音がどこまでか、分かりません。これ以上になく策謀を巡らす頭があるのですから、わざわざ敵を強化せずともやりかたがあったように思えます。

尽くす悪逆は意図より感情が優先されているような気がします。策略を行うこと自体が楽しくて仕方がない。

今回の敵は、そんなエボルトの兄貴というキルバス。破壊衝動に駆られるままに動く気質です。自身の破滅快楽主義のため、王として付いていた星を破壊してしまう、節操も何もあったものじゃない敵です。行き過ぎてしまって、全宇宙の破壊まで目論むほどです。

さすがにこれにはエボルトも引きます。まったく勝てなかった兄貴ということもあるでしょう。ここにエボルトの屈折した性格が生まれた要因の一つが窺えます。

ギルバスがこんなヤツなので、万丈エボルトと手を組めます。このふたりの掛け合いが、戦兎と違った良い味わいです。

エボルトは策略嗜好性なので、敵が存在しなければなりません。揶揄できる手強い相手を必要とします。

まさに「目の上のたん瘤」だった兄貴ギルバスを排除できました。かつて成長を促しながらも倒すべき相手と共闘の末です。エボルトが去り際に、いつかまた戻ってくるといった意味合いの言葉を残します。真意は、いつかまた戻ってきたい、ということでしょう。やり甲斐あるメンツが「新世界」にはいるのですから。

万丈に、戦兎

恋人の件で万丈はさんざん苦しんできました。なので救えなかった由依から、ついに好意を寄せられるようになれば、やっと報われた感があります。
また二人がくっつくことが判明した際の、げんさん、そして一海紗羽が寄ってきて大騒ぎする「わちゃわちゃ感」が凄くいい。ここは演技うんぬんよりも長期に渡って撮影を共にしてきたメンバーだからこそ出せる雰囲気でした。

その一方で、何やら相変わらず倉庫の中で一人きり没頭中の戦兎のもとへやってくる美空。食事を持ってきてあげてきたようです。ここで繰り広げられる二人のやりとりには、とても、ほっとさせられます。やはり世に隠れたまま、誰にも相手にされない状況は辛い。
新世界では要らない存在と判断していた戦兎が、由依の教え子たちを救っている。美空に笑顔で、必要な存在と言われて微笑みうなずく戦兎は内心とても嬉しかったのではないか。

帰ってきた万丈エボルトが残した言葉を聞かされたことでしょう。仮面ライダーが必要される日に備えなければなりません。まだまだ戦兎は活躍しなければならないようです。

クローズで終わる予定が・・・

メイキングを観てみると、撮影終了後のインタビューにおいて、各キャストが感極まっております。戦兎を演じた犬飼 貴丈など「ビルド単体としては最後」と答えていたほどです。

ビルド NEW WORLD 仮面ライダークローズ』は、最終回の「悲しいまま」を終わらせないためだけに製作された作品と解釈しています。尺も1時間といった短さのなかでは、説明不足は必至で多少の齟齬が生じるのは仕方がないことだと思っています。

悪い言い方をすれば、この作品は蛇足です。しかしながら「後が気になる終わり方」で、もやもやしているファンにとっては必要な作品でした。
ハイスピードカメラにより派手な爆発も、現在ではそう滅多にないシーンなれば見応えがあります。担当したアクション監督が初演出なれば、これまでとはちょっと味付けが違うアクションシーンがあり、こちらも見逃せません。バトルシーンが細かいところで魅せてきます。

当初において『ビルド NEW WORLD 仮面ライダーグリス』は予定になかったように見受けられます。「新世界」におけるビルドのキャラクターたちの活躍が続くとなれば、観ないわけにはいきません。
しかし第二弾が秋口以降に発表だなんて、半年も間が空くのは後追い企画の運命ですか。ビルドの後番組『仮面ライダージオウ』が終了してしまいますよ!なんとも息の長い作品となったものです(笑)