【原作とアニメ】坂道のアポロン

けっこう比較好きです。問題は原作から入るか、いきなり映像化されたものから入るか。どちらが最善かは、それはもう作品による!この「伸るか反るか」が楽しいからやめられない。
いや、ただ重箱の隅を突つきたいだけかもしれない。イヤな性格なだけかもしれません(笑)。

今回の『坂道のアポロン』は、アニメから原作へといった流れで観ています。大したことではないと思いますが、今回はそうした体験で書いているという点を踏まえて眺めてもらえれば得心するところがあるかもしれません。

以下、ネタバレです、独自解釈による偏見もあります(笑)どうか、ご了承のほどを。製作者などの敬称も略とさせていただきます。

【坂道のアポロン】作品概要

原作は「月刊flowers」に連載されていた、対象年齢がやや高めの少女コミックになります。
著者は『小玉 ユキ(こだま ゆき)』長崎県佐世保市の出身です。『坂道のアポロン』は作者の故郷が舞台になっています。
連載は2007年9月から2012年1月まで、番外編は2012年3月から7月までです。巻数にして9巻と番外編1巻を含めた全10巻です。

アニメは監督が『渡辺信一郎』と音楽が『菅野よう子』という『カウボーイ・ビバップ』コンビ。放送期間は2012年4月から6月にかけてです。

時期を見る限りでは、原作の結末についてアニメスタッフへある程度は伝えられる時期です。もしかしてざっくりだったのかもしれません。ラストはそれぞれで好きなようにといった了解が取れていたのかもしれません。

原作コミックとアニメの落とし所はまったく違っていました。

【坂道のアポロン】主要ストーリーと違い

話しの主な枠

これは四角関係のお話しです。

時代は1966年、はっきり時代設定が定められております。
都会(横須賀w)から田舎の長崎に転向してきた男子高校生の「」は船乗りの父の都合で、いじわるな伯母や従姉妹がいる家へ預けられます。ピアノでクラシックをひける、真面目な秀才タイプです。
その転校先で豪放磊落な「千太郎」と友人になる。その幼馴染である「律子」には好意を抱きますが、律子千太郎が好き。その千太郎は不良に絡まれていたところを助けた「百合香」に一目惚れする。

それぞれの想いが一歩通行です。そこへ「Jazz」という舞台装置が加わるわけです。当時の時代を反映した音楽です。現代ならロックを中心とした「バンド」に相当するものです。

音楽に恋といった青春模様。時代設定に馴染みないだけで、実は王道なのです。

この恋の行方ですが、は報われます。千太郎は「淳兄」と慕う人物に持っていかれてしまいます。

しかしながら恋の行方に決着がついても物語は終わりません。

千太郎は両親に捨てられたおり、叔父夫婦のところに厄介になっています。そこの子供の1人をバイクに乗せて走っていた時に事故に遭います。千太郎自身は大丈夫でしたが、子供の方は生死をさまよいます。この件で、千太郎は皆の前から姿を消します。

もまた医師になるため東京へ行くので、律子と離れなければいけなくなります。

アニメで削られた部分と変更

アニメでは、時を経て医師になった千太郎と教会で再会。勝手に演奏して逃げ出して、そこへ百合香から知らされて訪れた律子がふたりを認めて笑みを浮かべる。
これで幕引きとなりましたが、最後の方の駆け足ぶりが如実もいいところ。いきなりの終了感であります。

やはりというか、原作を読んでみればかなりの部分が削られていました。

が上京してからの大学時代。ここの部分がばっさりです。
はずっと会えずにいた母親と再会します。心打ち解けた関係を築けます。
淳兄とも再会すれば、ジャズ・セッションするほどです。
そして、千太郎の行方もまた追っています。片時も忘れていないのです。

律子との関係は影が射します。文通はしていますが、だんだん内容が薄くなる。律子の家が電話を設置したようであれば、おっかなびっくりながら掛けてみる。すると男が出て、迷惑していると言われてしまう。身を引くことを決心します。

時は流れて医師になった。勤める病院へ百合香が訪ねてきます。アニメでは妊娠してましたが原作はしていない。千太郎の行方を知らせる情報を持ってきてくれたのです。

長崎の島で再会します。それが契機となって、は身内の大病院より島の診療所への赴任を選びます。
そんな生活のなか、かつて千太郎と一緒にバイクに乗って重症を負った子が結婚式を挙げます。そこで律子と再会します。全てが誤解だったことも分かれば、晴れ晴れと披露宴でジャズ・セッションを繰り広げます。

【どっちと言われれば原作】でもアニメもやってくれて良かったと思う理由

原作のラストは第一話につながります。
坂道を前にした薫が「忌々しい坂道だ」と独り呟くシーンがあります。第一話においては言葉通りでしたが、ラストは口元に笑みが浮かんでいます。見事にテーマが収斂しています。

少々厳しい物言いになりますが『坂道のアポロン』という作品においては、原作を読まなければ価値が分からないと思います。

しかしながらアニメ化されて、良かったと思っています。
それはこの作品のために作られた音楽。これだけでもアニメ化したかいがあったというものです。

ここで書いている人はジャズをよく聴いています。その体験談から述べさせていただきますと、よく紹介で名盤だからと勧められているアルバムがあります。それを聴いていきなり「良かったぁ〜」とはならない音楽がジャズだと思われます。最初は何がなんだかといった感じで辛抱し続けて聴いていくうちに良さが分かってくる。もし最初から良さが分かるなら、ジャズを聴き取れる耳を持っているのだと思います。それは滅多にない資質です。

アニメ「坂道のアポロン」オリジナル・サウンドトラック』はジャズの入門編としては最適なものになっています。難解な解釈による演奏ではなく、素直なリスペクトとなっています。ジャズを聴くなら、過去の名盤よりこちらが先のほうが良いと思われます。
菅野よう子が書いたオリジナルも含めて個人的にもずっと愛聴しています。但し、そこはジャズ。決して取っ付き易い音楽ではないですが、気に入れば長い付き合いになってしまうでしょう(笑)。