【イタリア・オリジナル版とアメリカ・リメイク版】みんな元気

リメイクがオリジナルを超えることはない!と思っていたのは若気の至り。いやいや、そんなことはなく今でもそう思う。やはりゼロから立ち上げた作品に「深さ」という点で及ぶはなかなか難しい。
やはり劣化のイメージはつきまとう。
ただ逆にかつての作品を現在の観客にどう提供するか、その点に絞り功を奏す作品もある。良い作品になる。近年はその傾向が強まってきているかもしれない。映画も産業として成熟してきているのだな、と思う。

今回はオリジナルとリメイクの両者を携えた内容になります。

以下、ネタバレです、独自解釈による偏見もあります(笑)どうか、ご了承のほどを。製作者などの敬称も略とさせていただきます。

【いきなりですが】ストーリーの骨格

主人公は妻に先立たれた定年退職した老人です。
毎年、集まるはずの子供達が誰もやってきません。よし、だったらと老人は子供達の元へ自ら赴いていきます。
老人は子供達いずれもが順調な生活を営んでいると思っていました。実は亡き妻や子供たちの嘘によって問題なしと思い込まされていただけなのです。次々に現れる真実に、そして子供の一人は悲劇的な結末を迎えていました。
老人が倒れたことで、子供達が集まります。取り繕っていられない状況に至って、ようやく残った家族全員が集まるのです。

【ちょっとその前に】1989年平成元年というターニングポイント

いきなりですが、個人的な話しです。作品に関係ない(なくもないけど)ので、ここは飛ばしてほうが無難かもしれません。

オリジナル『みんな元気』が公開される前年は1989年になります。平成元年に当たります。
この年に『ニュー・シネマパラダイス』と『ゴジラVSビオランテ』が劇場公開です。公開時期も同じです。なぜ言い切るかというと、この2作品を同日にハシゴして観ていたからです。

衝撃的な日でした。この日から、より映画へ邁進したように思います。以前より幅広く観られるようになったと思います。

元号にはこだわらないとなんて言っておりますが、振り返れば「平成」はとても思い出深かったです。

ニュー・シネマパラダイス』は不朽の名作です。『ゴジラVSビオランテ』は一部の好事家にとって(笑)忘れられない作品です。

【オリジナルとリメイク】作品概要

オリジナル『みんな元気』は1990年のイタリア映画です。監督はジュゼッペ・トルナトーレ。他にも『海の上のピアニスト』などイタリア映画界の巨匠です。
前年の『ニュー・シネマ・パラダイス』の大絶賛を受けてか、その翌年に早くも公開された作品が『みんな元気』です。大当たりを受けて製作を急かされた一面も否めない作品だと思います。

監督のジュゼッペ・トルナトーレニュー・シネマ・パラダイスを観た方なら分かると思いますが、自身が大の映画好き。古典映画の復興活動を精力的に行っているくらいです。
過去の名作に対して、かなり精通しています。映画好きは全世界のあるゆる名作を求めます(たぶんw)
ジュゼッペ・トルナトーレも御多分に洩れず、日本の映画にも精通しているようです。『みんな元気』は小津安二郎監督『東京物語』のオマージュだそうです。ならば名作の香りが漂って当然かもしれません。
この『東京物語』因みに個人的には内容もさることながら、徹底した「ロー・ポジ」のカメラ・ワークがたまらんというと、友人にこれだから特撮好きは困るみたいなことを言われます(笑)。

リメイク版『みんな元気』は2009年のアメリカ映画です。オリジナルより20年近く経ってからです。たぶん感銘を受けて今回の製作に踏み切ったスタッフも何人かいたでしょう。
監督はカークジョーンズ。頭髪のないラッパーのほうではございません。あまりパッとした業績はありません。
むしろこちらは出演者に注目です。ロバート・デ・ニーロに、ドリュー・バリモアとくる!サム・ロックウェルというのもいい。エンディングの歌はポール・マッカートニーときます。

オリジナルの老人もマルチェロ・ヴィンチェンツォ・ドメニコ・マストロヤンニという名優です。フェデリコ・フェリーニの『甘い生活』など数知れずの俳優です。

しかしながら世代的にと申しましょうか、リメイク版のほうが出演者の顔ぶれに、おおっ!となりました。ここが作品を見較べるうえで大きなポイントになったと思います。

【オリジナルとリメイク】その違い

みんな元気』上映時間からして、だいぶ違います。
オリジナル126分に対し、リメイク版100分。観客を飽きさせない配慮が優先されるアメリカ映画らしいリメイク版の時間です。
しかしながらリメイク版は皮肉なことに興行としては冴えず、日本では劇場公開がされませんでした。

オリジナル版は映像美全開で、名作の趣きを漂わせています。
老人は公務員で子供は5人です。訪ねていくうちに、一人が自殺していたことを知ります。最後は故郷に戻って妻の墓へ「みんな元気だ。子供達もよろしくと言っていた」と伝えるシーンは今でも心に残っています。

リメイク版はハリウッド作品に見慣れた通りの作りです。
老人は電線のコーティングという地味な仕事を黙々とこなしてきました。子供は4人です。そのうち一人はアメリカらしくクスリによって危篤状態であり、作品にリンクする形で亡くなります。こちらは老人が妻にも言えないことがあったという面をさらりと描いております。

映画好きならオリジナル版でしょうか。監督ジュゼッペ・トルナトーレの映像感覚と、苦味を含んだ結末が忘れがたいものにしています。

リメイク版は救いがあり、設定もより現代的なので親近感があります。そのため胸へすとんと落ちやすいかもしれません。何よりロバート・デ・ニーロは凄い俳優だなと改めて思います。

【でっ?】どっちがオススメ

ここまでオリジナルとリメイクについて述べさせていただきました。

どちらがいいんだ、といえば、場合による!と答えます。

もうちょっと真面目に答えるならば、入り口はリメイクの方がいいか、と。もし誰かと一緒に、それがマニアックな趣向でない者なら、なおさらロバート・デ・ニーロドリュー・バリモアだよ、エンディングはポール・マッカートニーなんだ、と通じやすいはずです。

もし『海の上のピアニスト』が良かった、と来たならば、ためらわずオリジナルも一見の価値ありと推します。しかしながらDVDが現在(2019年)は出回っていないようです。

つまりオチとして「選びようがない」状況というわけであります。