【新海誠の新作は令和元年です】星を追う子ども

これを書いている時点では、新海誠監督『天気の子』はまだ公開されていません。

君の名は。』が新海誠とのファースト・コンタクトという方もいらっしゃると思います。そこで気に入ってくださったか方も多いと思います。
そんな方に訊かれて問題になるのは、『君の名は。』の次に何をお勧めするかである。悩ましいところです。

君の名は。』は新海誠にして初めてといった作風を感じた。新海ワールドは相も変わらずだが、これまでより広く開かれた感触がある。新海誠の作風はこれまで観客を選ぶ感じだった。

ただ一作だけファミリーピクチャの要素を入れたような作品がある。ここではそれを取り上げたい。

以下、ネタバレ及び独自解釈による偏見(笑)が含まれますことをご了承ください。製作者などの敬称も略とさせていただきます。

【星を追う子ども】作品概要

2011年5月7日に公開された新海誠監督4作目の劇場用アニメです。前作は『秒速5センチメートル』から約4年ぶり。劇場公開作品としてデビューしたのが2002年ですから、寡作な監督と言えます。

製作には2年ほどかけた『星を追う子ども』これまでとは異なる作風とされ、ファンの間で意見が大きく分かれた作品でもあります。客入りも芳しくなかったみたいです(元々公開規模は大きくありませんでしたが)。

新海誠にとっては初めて否定が大きく突きつけられた作品かもしれません。けれどもこれによって監督してやっていく決心が付いたそうです。極論すれば『君の名は。』が生まれるためには必要な……と言いきるのは強引すぎますね(笑)

【星を追う子ども】ストーリーを追う

出会いは突然

主人公は明日菜という女子中学生です。山深い、ど田舎に住んでいます。父を早く亡くして、母親は町の病院で看護師をしているみたいです。よくタバコを吸っています。ストレスが多そうです。

明日菜は秘密基地を持っています。なんと、『あの花』と同じか!と思いますが、放映年度が重なります。この頃は田舎の秘密基地がアニメ界でシンクロしていたか。

さてこの明日菜は秘密基地の近くの岩場で鉱石ラジオを聴くのが楽しみなようです。その放送に歌声が混じることがあるようです。
その歌声の主である少年シュンが、明日菜が怪物に襲われた際に助けます。
翌日に秘密基地そばで会えば、ふたりは胸が高まります。シュンはなんと、明日菜のおでこにキスするくらいです。もう初恋全開のこそばゆくなるシーンです。

けれどもその後、明日菜シュンが遺体で発見されたことを聞かされます。

怪しい先生と冒険へ

シュンの死が受け入れ難い明日菜は、産休代理でやってきた森崎先生が授業でやった「死後の世界」に強く興味を持ちます。森崎先生のお宅へ押しかけるくらいです。
行ったかいがありました。どうやら「アガルタ」と呼ばれる地下世界がある説を聞きます。そして何よりも森崎先生明日菜に好印象を抱きました。実は森崎先生「アガルタ」を探る組織の一員であり、この後に襲撃するメンバーでもあります。
もしここで森崎先生が「こんなやつ、どうでもいいや」なんて思われていたら、明日菜の先の人生はなかったかもしれません。

秘密基地でシュンと瓜二つの弟であるシンと出会います。兄の持ち出した「クラヴィス」という石を回収にきたらしい。そこへ森崎先生も加わった襲撃部隊がきます。
なんだかんだでアガルタへ潜り込めたのは、シン明日菜、そして組織を裏切った森崎先生
シンはさっさと元の場所へ戻れと行ってしまいます。森崎先生は亡くなった妻を甦らすための秘密を求めてアガルタと行くと言います。明日菜はそれに付いていくことにします。

大冒険と別れ

地下世界とは思えない美しい世界が広がります。さすが新海誠は魅せます。

廃墟と雄大な自然が織りなすなか進む明日菜森崎先生。けれどもある晩に、明日菜は「夷族(イゾク)」というバケモノみたいなものに攫われます。攫われた先で小さな女の子マナと出会います。
なんとか逃げたい明日菜たち。夷族(イゾク)は陽に弱いらしい。けれども陽はかげっていく。襲撃してくる。
そこへ助けにくるシン。みんなで逃げて逃げまくりです。シンは怪我を負い、川に流されます。

流れ着いた明日菜たちを森崎先生が拾いあげてくれます。

とりあえず向かった先で村にぶつかります。もちろん地上の人間には非好意的ですが、マナの祖父がいることで休息を得られます。情報もまた得ます。

明日菜森崎先生は目的とする場所がこの世界の涯てにあり、死者を甦えらせられると言うことで向かいます。
ただとんでもない断崖絶壁に明日菜森崎先生に鍵となる石を渡して諦めます。ただそこへ夷族(イゾク)が現れ、大ピンチに!そして又もや追放を覚悟で追ってきたシンが助けてくれる。
そして現れたここの世界の神様みたいな存在に森崎先生のところへ連れていってもらう。

森崎先生はどうやら死者の復活へ邁進中。しかしながら生贄を寄越せというようであれば、ちょうど来た明日菜と自分の右目を差し出すことで、もう少しまでになる。
しかしシンが鍵となる石を破壊する。明日菜も夢のなかでシュンの死を受け入れる。甦りの儀式は失敗で終わる。

その後、シン森崎先生はアガルタへ残る模様。
唯一、戻った明日菜はそれからいくつかの時を経て卒業式を迎えます。

【正直なところ】と、でも見ずにはいられない新海誠

正直なところ、腑に落ちない点が多い作品です。
代表的なところを挙げると、夷族(イゾク)が最初に明日菜をさらった時に、なぜ何もしなかったのか。その後において食い殺そうとした場面があれば、尚更です。もしかして小説や設定など読めば分かるかもしれませんが、映画のなかからでは伝わってきません。
他にもあれこれありますが、そればかりを書くのも楽しくないので止めます。ぜんぜんダメな作品ならいいのですが、これはこれで見てしまうからです。

やはり新海誠が作る舞台は見惚れます。アガルタの情景はさすがとしか言いようがありません。こうした場面を見れば、なぜ自分が細田守作品に今ひとつノレない理由の一つが分かるような気がします。

声優が、特に明日菜役の金元寿子と森崎先生役の井上和彦の素晴らしさには息が漏れるほどです。やはり本職は凄いです。

星を追う子ども』はやや話し作りに詰めが甘い部分が散見しますが、諦めないでまたやってみない?と新海誠監督に進言したい自分がいたりします(笑)