【全4巻】海月と私

「海月」が読めない。いや、そんなことはないのだ。なぜなら能年主演という大体的に宣伝さていた『海月姫』があり、個人的にはアニメの方を見ている。

それでも「海月」を「みつき」と読んでしまいます。これのほうが呼び名として美しいと思うのです。つまりナルシスト全開の、自分に酔っているわけです。引かないでください(笑)

今回の『海月と私』という題名を見た時は「みつきとわたし」だと勝手な脳内解釈のもと手に取ったのである。もちろん正式な読み方は「くらげとわたし」けれども自意識過剰によるミスであろうとも、おもしろい作品に出会えたのだから、結果オーライである。

以下、ネタバレ及び独自解釈による偏見(笑)が含まれますことをご了承ください。製作者などの敬称も略とさせていただきます。

【作者は】麻生みこと

海月と私』の作者は、麻生みこと。誕生の月日は公開されていますが年齢不詳です。大人であることは作風を見ればわかる感じです。

デビューが1991年ということですから、なにげに大ベテランです。『そこをなんとか』はドラマ化されたので、これが代表作でしょうか。
個人的には『天然素材でいこう』でしょうか。この頃「LaLa」を始めとする白泉社系はよく読んでいました。とはいえ、あんまりもう憶えていないなぁ〜(笑)要はハマらなかったわけである。

だから「みつき」で読むのでは、と手に取った『海月と私』は、同窓会で会う感覚に近いです。

【ストーリー】じわっじわっと進んでいきます

第1巻

海辺にある鄙びた旅荘「とびうお荘」三組しかお客を受け入れられない、それは隠れ家的と言えば聞こえはいいが、しがない旅館である。

そこで料理の腕は立つが接客は面倒に思う主人「旦那さん」は仲居を務めていた方が亡くなったことより、旅館をたたむことにする。ただ予約も入っていることだし、急ではやはりどこか迷惑をかけてしまうだろう。とりあえず春までは続けようと、仲居を募集する。

そこへやってきたのは、若くて美人で、しかもずっと年上男性である旦那さんをあっさり翻弄すできるほど「できた性格」の岩松梢。本名かどうかですら怪しい限りではある。けれども旅館に勤めを求める者にワケありな事情を抱えている場合は多い。何より旦那さんは断ろうとしても、には敵わない。
なし崩しで住み込むで仲居をやってもらう形になる。

婚約者が親友の元カノということで複雑な心情を抱えたカップルの話し。
年配の良き友人同士といった男性二人連れは、実は一方がリストラを勧告する話し。
女好きと思われた初老の教授が追いかけくる助手の女性のために身を引こうとする話し。

と名乗る新しい仲居が旦那さんの忠告も聞かず、首を突っ込んで解決していきます。どうやらお節介というより、ただ不幸を黙ってみていられない性格のようですが飄々としているので騙されてしまいます。

旦那さんの父である先代の主人を知る男性客がくる話し。
ここで旦那さんは父親について誤解をしていたことに気づかされます。そして「とびうお荘」を続けることを決心するのです。

第2巻

は絶対に身バレしたくないようですが、テレビの申し込みがきます。普通なら断りたいところですが、五月以降の客が全く予約がありません。春にたたむ予定でいたのが響いたようです
けれどもここにおいて肝心は年配夫婦の心の機微におけるお話し。

次にやってくるは鄙びた「とびうお荘」の宿敵(笑)地域一番人気「竹本温泉ホテル」当主は国会議員。そこのお嬢さんが転がり込んでくる話し。

旦那さんのもとへ、遥か以前に離婚した経歴があることが判明。いちおう娘が結婚の挨拶ということでカレを連れてくるが、状態としてはヒモになりそう。そう簡単に認めたくはないが、まぁ仕方ないかと収まる話し。因みに娘は3人いるようです。

とびうお荘が魚を仕入れている先の次男坊「すがやん」悪いヤツではありません、といったキャラです。けれども東京からカノジョを連れてやってくる親友に見栄を張りたいから(下心もあり)に恋人のフリをしてという話し。

この巻でが、これまで見せてこなかった寒々しい表情や、裏で法律について調べていることが判明します。不穏な空気が漂いだします。

第3巻

とびうお荘に興信所やら、崩れたフリーのルポライターが訪れます。「春日亜紗美」ではないかと梢を疑ってきています。けれども大事なところはルポライターが立ち直る話し。

昔は友達みたいに仲が良かった母娘がまた絆を取り戻す話し。ここで台風によってもたらされたアクシデントにより、旦那さんを抱きしめてしまいます。
おかげで旦那さんの間に微妙な距離が出来ますが、それが元の距離へ戻るが次の話し。そこで竹本温泉当主の国会議員がある意味活躍してくれます(笑)。

不倫カップルの宿泊です。けれども男のほうは奥さんに突き止められ帰京です。残された女の人が立ち直る話し。
旦那さんがDNA鑑定について調べていることを知ります。そしてが姿を消します。

第4巻(最終巻)

旦那さんは自分の娘ではないかと懊悩します。若い頃の旦那さんは女性に対してやんちゃだったようです。

けれども高本温泉当主の国会議員はもっと酷かったみたいです。権力に言わせてぶいぶいと、つまり普通の政治家です。けれども諸悪の根源はこの人だったというところもあります。

は「春日亜紗美」でした。お母さんも出てきたくらいなので間違いないです。

嘘を続けていたこと亜紗美。もう旦那さんとはお別れになるところでしたが、高本温泉当主の国会議員秘書がちょっとイっちゃっている青年です。話しがついた後に、ナイフをかざして襲ってきます。
それを身体を張って庇う旦那さんは海へ落下していきます。

それから何ヶ月も経ったようです。旦那さんの入院期間を述べるくだりで判明します。
その間の「とびうお荘」は亜紗美ことが切り盛りしています。娘だったらこんなことはしていないそうです。ぞっこんなんだそうです。

【舞台は】赤沢丸昌

最終巻である第4巻のおまけ「すがやんの日誌」その後が描かれていて、これで満腹です。旦那さん、良かったね、なのですが、すがやんが心配です。どうも素直に育ちすぎて事態が掴めないやつです。身近といえば身近なキャラではありますが、明日が訪れないのは明白です(笑)

辺鄙な宿に訪れる様々な客によってもたらされる人間模様が沁みます。大人な世界です。なんて奥手の男子からすれば理想だし、年上男性からすれば願望です。心内を見せない女性は却って惹かれます。
しかし正直なところ、最後のドタバタは2時間サスペンスドラマを見ているような気がしないでもないですが(笑)けれども「傷ついた大人たち」が回復していく物語であることは変わりありません。
なかなかあるようでない、味のある作品でした。

ところで漫画巻末の「thanks」において『赤沢丸昌』の名があります。舞台となった磯料理店です。どうやら、まんま描かれているようです。
もし機会があったら写真に収めてきたいな、と思っております。収めたらここに追記したいです。料理もまた絶品らしい。魚一匹まるごと出てくるほど量もあるが、値段もまたボリュームありそうなので食事するかどうかは微妙ですが(笑)