【ジブリなんです】レッドタートル ある島の物語

日本テレビが深夜枠「映画天国」で『レッドタートル ある島の物語&巨神兵東京に現わる 劇場版 TV版』という豪華?二本立てである。たいていはチェックで終わる「映画天国」です。始まるまで謎の紹介(若手芸人っぽいのがやる寸劇が萎える)やエンディングバッサリとかで感動が……。でもラインナップいいですよ、参考にさせていただいています。

今回は『巨神兵東京に現わる』もあるから、と録画のまま観だしたら……ズキュン!です。素晴らしかった。今回はきちんと流してくれるエンディングに「このまま巨神兵やるよー」的なテロップが邪魔だったくらいです(笑)。

以下、ネタバレです、独自解釈による偏見もあります(笑)どうか、ご了承のほどを。製作者などの敬称も略とさせていただきます。

【作品概略】ジブリ初の海外共同製作

日、仏、ベルギーの3カ国における合作映画です。
監督・脚本・原作とこの作品における源はこの人といっていい、マイケル・デュドク・ドゥ・ヴィット。と、脚本にパスカル・フェランという人も加わっています。他のスタッフもカタカナ名ばかり(笑)なので割愛します。

この監督マイケル・デュドク・ドゥ・ヴィットは宮崎駿の強い推しによります。
しかしながらアーティスティックプロデューサーの名の下にスタッフとして加わったのは、高畑勲です。作品を観終われば納得です。もし監督の名を伏せられて、宮崎と高畑、どっちの作品でしょうと言われたら、たいていの人は高畑勲だと答えると思います。

公開は2016年です。不勉強な自分のせいもありますが『レッドタートル ある島の物語』の存在はぜんぜん知りませんでした。公開時に興行動員数も良くなかったどころではなく、大失敗だったようです。
あまり広告も打ってもらえず、同時期にはあの『君の名は。』が公開中ときます。加えて、この頃のジブリでは個人的にも食指は動かなかったかもしれません。

けれどヤマトしかりガンダムしかりルパン3世しかり、名作は最初にこけるものです。喩えが強引なのは重々承知ですとも!(笑)。

【ストーリー】レッドタートル

上映時間にして、81分。決して長い映画ではありません。
しかしセリフは一切なしです。けれども登場人物は擬声や息づかいは発します。声優はいますが、公表されていないそうです。
映像美と音楽と、大自然を含めた動きで魅せていきます。

ロビンクルーソーな生活からファンタジックな出会いまで

大波に翻弄されたから始まります。冒頭から映像のセンスを炸裂させます。
そして打ち上げられた島が終始に渡る舞台となります。無人です。竹など植生は豊かです。島の内側には真水の池があります。飲料はともかく確保できたようです。

は無人島を巡りで絶望します。どこかへ続く橋を渡ったり、楽団の演奏などの夢を見ます。望郷の念は募るばかりのようです。筏を作って脱出も試みます。けれどもなぜか沖合に出て間もなく筏は壊れます。壊される感じです。

砂浜で筏を組むのそばで、ちょろちょろするカニがいいパフォーマンスしています。

アシカの死骸を見つけてからは、脱出のへの想いを更に募らせる男はより大きな筏を作って沖に出ます。

そこで赤い大きなカメが現れ、見つめ合います。
その後、いつもながらに筏が壊されるかのようにバラバラになります。

は赤いカメがやったと思います。実際のところは分かりません。砂浜に上がった赤いカメを棒が折れるほど殴りつけます。ひっくり返してしまいます。

ひっくり返されたカメはお手上げです。死んだように動かなくなったところで、男は後悔します。水をかけたりしていたら、驚きです。
甲羅の中にの姿が!必死にできる限りの手をは尽くします。

目覚めたは警戒心から距離があります。それでも上着をもらったことでは甲羅を沖の彼方へ流します。もまた作りかけの筏を流します。
お互いに接近しますが、は赤いカメを殴った罪悪感が甦ります。それを許すように触れる。罪と許しを経たふたりに壁はありません。

とある島で過ごした人生

赤ん坊の息子が浜辺でかわいく遊んでおります。子供が生まれたようです。
ちょい大きくなった息子は流れ着いた瓶を拾って遊んでおります。この瓶はやがて息子の旅立つ理由になります。
この息子はカメとシンパシーを交わせるようです。泳ぎもなんなくこなします。
成長していく息子と3人で送る日々。
息子が青年にまで成長したある日、島全体を覆うほどの大津波に襲われます。浜辺で遊んだカニを初めとして、たくさんの命が失われました。しかし家族3人はなんとか助かります。
生活を立て直していく日々のなか、息子は失くしたはずの瓶を見つけます。外にある未知の世界に対する気持ちが抑えきれなくなります。

夢のなかで、止まった波の上から眺める世界。息子の気持ちはもう抑えきれません。別れを告げて三匹のウミガメと共に旅立っていきます。
寂しさを隠せない女にそっと寄り添う男。こうして島に残った、また二人きりの日々を送ります。

すっかり年を取った。ふたりは浜辺でダンスを踊ります。がこの島に流れ着いた頃に見た楽団演奏の夢が想い起こされます。

その夜、浜辺で寝転がるふたり。目を覚ましている男は起き上がることなく顔だけ向けて、水平線の月を眺めます。ずっと続いて虫の鳴き声が、ぱたりと止んだ瞬間にの目は閉じます。
異変に気づいた女は自分が残されたことを知ります。翌朝、男の亡骸の手に合わせていた時に、女の手のそれはウミガメになります。ウミガメの姿に戻れば、うっすら朝やけに染まる海へ去っていきます。

【大人のための】映画作品です

映像の作り方からして、ジブリや日本アニメにはない、別の素晴らしさがありました。アニメという表現はまだまだ様々な可能性があり奥深いことを教えられます。

セリフがなく、動きや表情、演出の流れなどから意味を汲み取らなければいけない映画です。
自分はストーリー紹介で最後の場面、ウミガメに戻った海へ去っていくという表現をしました。ここは、海へ戻っていくでも良かったかもしれない。けれどもにとっての元が自分の居場所だったという解釈から、去っていくにしました。

考えだすとキリがない映画です。子供には、やはりきつい映画と申せます。まちがって子供連れで観に行った親の苦労が偲ばれます。

けれども骨格となるストーリーは普遍的な内容です。作家の池澤夏樹がパンフレットに寄稿した「これは一つの恋の成就、家族の誕生と充ち足りた歳月の物語である」が全てを言い表しています。

人生の折々で見返したい、この先もずっと残る作品です。