【『ペンギン・ハイウェイ』がリスペクト】惑星ソラリス

硬派なSF映画の金字塔といえば、『2001年宇宙の旅』が一番に挙げられるんじゃないかな?と思う。ただ名作っつーけどきついよー、とも言われている(ここは断言)しかしながら同じくSF映画の金字塔と並ばさせられる(笑)『惑星ソラリス』は、もっときついぞ!けれどこれでハマってくれれば映画地獄に落ちること間違いなしである。映画へ挑む気概が変わっていくでしょう。いいか悪いかは別ですよ。

今回は映画『惑星ソラリス』に、原作とリメイク版を絡めたブログです。

以下、ネタバレ及び独自解釈も含みますことをご了承ください。製作者などの敬称も略とさせていただきます。

【IVC】ソフト受難の時代

初めて観たのは、映画館でもなく、DVDでもなく、ビデオである。

惑星ソラリス』本国ソビエト連邦で公開されたのは1972年。日本では1977年。監督はこの筋では超有名なアンドレイ・タルコフスキー。上映時間は165分である。

2時間45分という、3時間弱と言い換えてもいい長さである。当然ながら、ビデオでは2巻組。途中で入れ替えるという、ハードディスク時代には考えられない手間を要するのである。

しかし、まぁ過去の名作とは長いもの。『惑星ソラリス』に限った話しではない。黒澤映画もそうだし、二部構成を取っているから、ソフトの入れ替えはいいタイミングとも言える。

だから観るほうとしては時間の長さなど、映画好きを自負したい者にとって構えることではない。

しかしながら、この『惑星ソラリス』である。監督が、意図的に退屈させるような作風にしたという作品である。ストーリーは追いづらく、延々と続く長回しカット。きつい!もう、とてもきついんだけど!
そういうわけで、他人によく進める映画となった(笑)意外と怖いもの観たさが働くのか。けっこう自分の周りは観てくれた。でも挫折する者もいるし、観終えたことに満足する者ばかりである。
しかし感銘など受けてしまうと……娯楽作品に冷たくなる弊害もまた生じるかもしれない。一時期の自分がそうだった。これこそ映画芸術だと、初代ゴジラに匹敵するんだとトンチンカンになっていくのである。

それはさておき『惑星ソラリス』は手元に置きたい作品となった。DVD待ちである。

国内向けで販売してくれる会社は『IVC』というところである。他が手を出さないような名作を発売してくれるありがたい会社である。あるのだが、出すだけ!そう出すだけで精一杯といった感じで「おい、ビデオより画質悪いんじゃねーの!」というのを平気で出す。

芸術至上主義と言われるタルコフスキー監督である。映像美こそ、命である。画質にこだわらない自分でも、これはダメだと思い手が伸びなかった。

しかし人間、生きていればである。
ついにというか、2013年に発売されたブルーレイは満足いくものとなった。良かった、良かった。
そうしたら、今度は新字幕に誤訳があると言う。でも、まぁそこは最後の部分だけ気をつければいいでしょう。

ラスト近く、同じ宇宙ステーション内で共にするスナウトに「君はもう地球に帰った方がいい」と言われた主人公のクリスの答えが、新字幕では「そうかもな」ですが、直訳は「そう君は考えるか」旧字幕は「そう思うか」。さぁ、好きな解釈を選びましょう。

それにしても購入して観返してみたら、きついどころか普通に観れてしまった自分は成長なのか、はたまた感性が間延びし出したか。年齢を重ねると、余計なことを気に病むようになるのである。

【惑星ソラリス】映画と原作小説

舞台は惑星ソラリスを調査中の宇宙ステーション「プロメテウス」って言うんです。見返した際は、そんな名前だったっけ?と記憶に留めておく難しさを痛感したものです。

通信が切れたので調査に行ってくれ、ということで主人公クリスが乗り込みます。
当然ながら様子は変です。なんか隠し事でもしている感じです。そのうち一人は自殺です。
そうこうしているうちにクリスの前に奥さんが現れます。いきなりこんなところで会うなんて、というより前に10年前に自殺した奥さんハリーです。

通信途絶の原因はこれです。惑星ソラリスの海が超知性体で、人間の潜在意識を実在する形に変換する不思議な能力を持っているそうです。

初めは驚き拒絶するクリスですが、やがて幻かもしれないソラリスの海が生み出したハリーに心は揺れ動きだす。苦しみます、悩みます。答えなんか、そう簡単に出せないぞ、といったお話しです。

超ざっくりのストーリー紹介でした(笑)

基本ベースのお話しは以上なのですが、原作と映画は少し内容が違います。

原作はポーランドのSF巨匠作家『スタニスワフ・レム』という呼びにくい人です。ハヤカワ文庫から『ソラリスの陽のもとに』邦題で長く出版されていましたが、2015年に新版で『ソラリス』になりました。旧訳は本来の作品より1割程度ほどカットされていたそうなので、買い足しです。もちろん旧訳と一緒に並べております。

この原作者と監督の間で激しい口論が交わされたことは有名な話しです。激しい口論と書きましたが、要は喧嘩だったみたいです。

原作にないシーンを監督のタルコフスキーが盛り込んだことで、伝えるべき意図が変わってしまった。
確かに、そうした一面はあります。芸術作品の範疇ぐらいに思われている『惑星ソラリス』ですが、やはり映画として味付けが為されている感じはします。特に原作にないラストシーンは作品としての面白さを追求したからじゃないか、と手前勝手な解釈をしております。違う可能性は大いにあります。

原作の終わり方から顧みると、文芸作品と言ってもいいメッセージを感じます。決して向き合うことは叶わぬソラリスの海という知性体=絶対的な他者相手でも、向き合う姿勢を投げ出してはいけない。作者が訴えたかった本筋はその辺りじゃないかな、と思ったりします。

どっちにしろ、映画も小説も手強い相手であるには違いないです。

【きついのはイヤという人のために】映画『ソラリス』

2001年宇宙の旅』と比肩するSF映画の名作『惑星ソラリス』となっているが、誰もが楽しめるわけではない。むしろ評論家が持ち上げる作品ほど一般には付いていけないことがある。
ヲタは周囲を見ずに先へ行くものである。仕方がないことだ。

それに実際『惑星ソラリス』の公開当時、SFファンほど酷評したものである。当時の雑誌などを観ると、へぇ〜と思った。タルコフスキーはマニアの間でも、いきなりもてはやされたわけではないようである。

まぁね、上映時間は3時間弱だ。しかも観客の退屈を狙っていたという(ホントか自分は疑っている)。なんにせよ、気軽に観ようという映画ではない。

そんな時には、ハリウッドにお任せということで、アメリカでリメイクされた。
2002年『ソラリス』、監督は『オーシャン12』などのスティーブン・ソダーバーグだ。主演はジョージ・クルーニーだし、上映時間も99分だ。ちゃんとロードショー用に製作されている。
ハリウッドで製作したのだから、すごいSFXが……なんてことはなく、変な言い方になるかもしれないが「まじめ」に作っている。だからといって名作というわけではない。個人的には妙なハジけ方を期待していただけに残念なくらいである。
敬意はきちんと払ってます、といった作品なので、特にこれまで興味のなかった人には……どうだろうね?(笑)この『ソラリス』を観て、タルコフスキーの『惑星ソラリス』が観たくなる人なんているとは思えないし。
それにしてもソダーバーグ。脚本まで書いて、本来はこうした映画が好きなヤツなんだな。なんでこんなに親近感を持つかというと、子供の頃に観た『マタンゴ』に、30歳くらいまでキノコが食えなくなるくらいショックを受けたそう。何を隠そう、自分にとっても最高の恐怖映画は『マタンゴ』なのである。
この一点だけでもソダー(勝手に略)を友と呼んでもいいくらいだ。もっともキノコが食えなくなるなんてことはないけどな、オレは(笑)。