【ディレクターカット版でお願いします】劇場版 仮面ライダー剣 MISSING ACE

放送終了後も何気なく登場回数が多い仮面ライダー剣(ブレイド)である剣崎一真、演じるは椿隆之。そして仮面ライダーカリスこと相川始と演じた森本亮治、当時は子役で天音を演じていた梶原ひかりが成長し大人になった現在、この3人が、『仮面ライダージオウ』に出演することになりました。
2019年3月31日放送の第29話、及び4月7日の第30話に渡ります。

今回はそれに因んで劇場版を取り上げたいと思います。

以下、ネタバレが含まれます。独自解釈も酷いかもしれません。どうか平にご容赦のほどをよろしくお願いします。製作者などの敬称も略とさせていただきます。

【不運といえば不運な】石田秀範監督

石田秀範は独特な演出法で知られています。いきなりライトを当てたり、音を切ったり、話しの展開から及びもつかない場面(主にギャグテイスト)を差し込んだり、と既存にはなかった演出をします。思い切った演出をします。全てがうまくいくわけではありませんが、個性が際立つ演出家です。

仮面ライダークウガ』のメイン監督であり、平成仮面ライダーの土台を作り上げた功労者の一人です。

しかしながら、この石田秀範は功績のわりに不運の影が付きまとう。
仮面ライダークウガ』が最終回以降のストーリーとして映画が用意されていたが、諸事情により立ち消えになります。オダギリジョーといった役者たちや脚本の荒川稔など、当時の様子から映画の準備がうかがえます。監督はまちがいなく石田だったでしょう。
クウガのプロデューサーだった高成が担当した『仮面ライダー響鬼』においてもパイロット監督に据えられますが、途中プロデューサーもろとも替わるほど、ごたごたしたシリーズ作品になります。
仮面ライダーカブト』においてはメイン監督して携わりますが、この作品はシリーズ屈指とも言えるホン(脚本)の弱さです。

そしてこの『劇場版 仮面ライダー剣 MISSING ACE』においては、テレビ放送の方は低迷しておりました。その前の放送枠である『特捜戦隊デカレンジャー 』は大人気を博していました。仮面ライダーとスーパー戦隊の併映である夏公開において、人気の面で配慮がなされます。
本来なら30分上映のスーパー戦隊枠をデカレンジャーに限っては10分近くの延長をし、その分は仮面ライダー枠を削る。80分少しの上映ですらディレクターカット版を生んでいた夏の仮面ライダー映画が、石田が初めて劇場作品を担当する『劇場版 仮面ライダー剣 MISSING ACE』においては更に上映時間に制約がかかります。
つくづく不運な監督です。

けれどもまだソフトとはいえ発表する機会が与えられていることは、とても感銘を受けた観客として幸運でした。このディレクターカット版推しで話しを進めていきたいと思います。

【冒頭こそ】全てがつまっているかもしれない

オープニング・タイトルの出方からして違います。
盛り上げてここぞで、どーん!と劇場タイトルを見せてくる。特に特撮・ヒーローものなどは、それがお約束みたいなものです。

ところが劇場版 仮面ライダー剣 MISSING ACE』は違います。
どこぞの山並みを映し出します。ドローンもない時代の空撮で緑で埋まる山をバックに、さらりと『劇場版 仮面ライダー剣 MISSING ACE』のタイトルを出します。なんかエンタメというより文芸作品のタイトル出しみたいで渋すぎません?と映画館で初めて観た時は思ったものです。

その山のある洞窟へ調査隊が入っていきます。マッチのように明かりを灯すたびに、主要スタッフ及び出演者が順々に浮かび出ては閃光のごとく消えていきます。目的の石板を見つけたところで、降りしきる雨の中、洞窟近くで、謎めいたオーラ全開の橘さんが立ち尽くしている。
劇場公開版は、ここがばっさりです。徐々に徐々に次の、あの名場面につながる盛り上がりが時間の都合上カットされたのはとても残念です。

もっとも知らないければ知らないで、次の展開はそれはもう陳腐な言い方をすれば「鳥肌もの」他に言いようがないくらいスゴい!

オープニングの後にいきなりくるぞ「ラストバトル」。
仮面ライダー剣において、敵は倒すのではなく封印というところが秀逸なアイデアでした。アンデッドというネーミングが与えられる敵体を全てカードに収める。この設定が映画に切なさを生むわけです。

最後の封印すべきアンデッドとなったジョーカー。それは共に力を合わせて戦うこともあった仮面ライダーカリスこと相川始です。ハカランダ(店名)遥香・天音の母娘と楽しく過ごす相川始の姿を目にしてきている仮面ライダーブレイドこと剣崎一真です。

「できれば、きみとは戦いたくない!」剣崎は叫びます。
「戦うことでしか、俺とおまえは語り合えない」始は答えます。変身姿もカリスからジョーカーになります。始なりの剣崎に対する気遣いが窺えます。男の友情です。

雨が降りしきる中、ブレイドとジョーカーが死闘を繰り広げます。ジョーカーこと始は封印されても仕方がないと思いつつも、天音ちゃんへの想いだけで抗い続けます。

ここの場面はスタッフや演者(役者とスーツアクター)が何かに取り憑かれたようだったそうです。CGなどありません。ひたすら雨とする水を降らせるなか、照明もカメラワーク及びスピード、そして音楽の入れ方など絶妙で、屈指の出来上がりとなっています。素晴らしかったです。

この映画は「ラストバトル」と銘打たれているここのシーンだけでも価値ありです。

【本編は】4年後とアルバム

ラストバトルは凄かった!とはいえ、ストーリーの本番はこれからです。

すっかり一般の人になって清掃員として過ごす剣崎、就職活動中の仮面ライダーレンゲルこと上城睦月 。かつて協力してくれた虎太郎はベストセラーで大金持ち。広瀬さんは結婚を控えていて、あまりもう関わりたくない模様。そして天音ちゃんは始が突然に消えたショックから万引き少女である。

ああ、仮面ライダーやっていた頃が良かったなぁ、なんて剣崎がぼやいていたらである。

全て封印したはずのアンデッドが甦って人々を襲撃している。どうにもならない剣崎たちの前に現れる見たこともない3人のライダー。志村純一 / グレイブ三輪夏美 / ラルク禍木慎 / ランスといったメンツが大活躍である。
ただ、この新しい3人がとても生意気で、剣崎たちが可哀想なくらいです。

加えて剣崎には天音ちゃんのことが心配です。なにせ始を奪ったのは、何を隠そう剣崎です。しかもアンデッドだったことなどを含めて真実が伝えられません。

やさぐれる一方の天音ちゃん。けれどもそんな彼女も部屋で一人、アルバムを広げます。始との思い出の写真。それが映像へ切り替わっていくところがいい。思い出が鮮やかに動き出す持っていき方はとても良かったです。天音ちゃんの想いが深すぎるゆえに荒む心情が汲み取れます。

【天音ちゃん】いろいろあります

ところでこの映画で大きくなった天音ちゃんを演じたのは石田未来。この後も『仮面ライダーNEXT』など色々とちょくちょく出ていましたが、2008年に引退と思いきや、2009年に復帰という、なんか事務所ともめました?みたいな邪推をしたくなる動きでした。当時、バンドをやりたいみたいなことも言ってました。その後、2013年に引退ということでこれで芸能界と完全に縁が切れたようです。

子役だった梶原ひかりが芸能活動を続けてくれていて良かったです。天音ちゃんは『仮面ライダー剣』において、いい話しを形作るになくてはならない存在なのですから。

そんな天音ちゃんは映画において、万能の力を手に入れるために必要な「生贄」という狙われ続ける役どころです。

劇場版 仮面ライダー剣 MISSING ACE』という作品はハード・アクション映画なので、天音ちゃんを巡る攻防みたいなもんです。

敵が大挙として襲ってくるならば、旧ライダーたちも復活するしかありません。橘さんは元より、睦月に剣崎とかつての変身能力を取り戻していきます。

そして新ライダーの3人のうちに紛れ込んでいた真の敵であるもう一人のジョーカー(アルビノジョーカーという)が本性を現し多数のアンデッドと率いて、襲撃してくる。新ライダーの他の2人はアルビノジョーカーによって殺害されている。
騙されるしか能がない橘さん(笑)と剣崎と睦月は仮面ライダーになって応戦。でもここでは、まだきっちりした変身ポーズを見せない。見せ場は後である。

苦戦するブレイドたち。さらわれる天音ちゃん。レンゲルがその能力を使ってジョーカーを解放する。
絶体絶命の天音ちゃん、そこへ取り囲むアンデットを蹴散らして現れるは仮面ライダーカリス!
「その娘に近づくな!」叫ぶ仮面ライダーカリス!もう絶対に守って欲しいお約束です。

この時に気を失った天音ちゃん。結局は意識を取り戻す前に、とは永遠の別れとなってしまいます。
でも、いいんです。始の幻と見るようになってから、いい娘へ還っていくのですから。ちょっと問題あるかな(笑)

【ただただ】単純にカッコよく、そして良いお付き合いです

最後の最後もまた雨が降りしきるなかです。
剣崎と橘さんと睦月が3人揃って同時に変身する姿は決まりすぎです。カッコいい、その一言しかありません。

仮面ライダー剣』はスタート・ダッシュの失敗と、役者の指導が厳しいで知られる石田監督ともってしてもどうにもならないレベルの演技から始まりました。揶揄されやすい作品であります。

けれども番組終了後も共演者同士の仲は続いております。意外に?多いその後の出演は、演じた役者の人柄が大きいのかもしれません。売れすぎない、という理由もありますが(笑)。

2016年にバイク運転者と喧嘩になり怪我したブレイド役の椿隆之。その時、降板せざる得なかった舞台の代役に、『劇場版 仮面ライダー剣 MISSING ACE』で共演した志村純一 / グレイブこと黒田勇樹にお願いしております。

妙に人間関係がいい『仮面ライダー剣』であります。個人的にも気に入っておりますので、何かの折に登場してくれれば嬉しい限りです。

ただ『劇場版 仮面ライダー剣 MISSING ACEディレクターズカット版はブレーレイで出てこない。上映版だけなんて……とりあえず現在手元にあるDVDを大事にします。