【青春映画です】夜のピクニック

どちらかというと「胸アツ」なドラマを求める自分ですが、まるきり真逆の作品を見たくなりたくなる時が無性にあります。盛り上がりなど求めるな!時には淡々と流れる静水如き映画が観たいだろ!と、熱くなるのです。
なにか間違っているような気がしないでもないですが、たまには気合いを入れなければ観ていられないような作品がいい!
そうなるとタルコフスキーに代表されるようなロシア(ソ連といったほうがしっくりくるな)映画などが挙げられますが、もちろん我が国ニッポンにだってありますよ(いや、ちょっと違うかもしんない)

以下、ネタバレが含まれますことをご了承ください。製作者などの敬称も略とさせていただきます。

【前説】観るきっかけ

2006年9月30日に公開された『夜のピクニック』原作は恩田陸。著名な作家さんです。幅広い分野を題材として活躍しております。
今回、取り上げる『夜のピクニック』は2004年に刊行された青春長編小説です。前日譚として『ピクニックの準備』という短編があります(短編集『図書館の海』に収録)これが映画公開に合わせて、スピンオフのショートムービーの企画を生んだようです。こちらのほうは特典映像であり、レンタルに収録されていないので未見です。機会があったら観てみたいです。

この映画を観る気になったのは、この原作を読んだからではありません。

監督が長澤雅彦だったからです。
別段、追いかけている監督ではございません。ただ2014年にテレビ東京で放送された『なぞの転校生』というSF学園ドラマがとても好きだからです。企画と脚本は岩井俊二で、杉咲花本郷奏多の二人は「すげーいい演技」でした。不朽のSF学園ドラマと絶賛する評論家もいたくらいです。
事家が絶賛する作品は必ずしも広く受けるものでないところが悲しいところですが(笑)でも自分は好きなんです(友人はちょっと……なんだそうだ)

そんな(どんな?)長澤雅彦が本格的に連続ドラマを演出したのは『なぞの転校生』くらいらしい。
ならば、まず映画を一本!ということと淡々っぽそうというわけで『夜のピクニック』です。

【歩行祭?】淡々だよね、これ

長澤雅彦という監督と胸アツとは真逆を求めた結果、辿り着いた『夜のピクニック』題名からして、文学っぽそうじゃない(軽薄だw)

しかもストーリーの舞台が「歩行祭」だそうである。ただひとすら80kmを歩く。ロードムービーとするにしても、とてもダルそうである。求めていたのはこれだ!と思ってしまったわけであります。

原作者の母校である茨城県立水戸第一高等学校で行われている「歩く会」がモデルだそうで、実際の撮影にも使用されたようである。ネタ元が現実にある話しのようです。

映画では80kmだそうですが、現実は70kmを走破するみたいです。
70kmは、車なら2時間はかかりませんが、これは学校行事。ウオーキングの速度が6kmと仮定すれば、約半日ですか。しかも高校生の「うざってー」と言いながらの歩行速度はもっと遅いでしょう。
どうやら24時間かけて、ひたすら歩き続けるようです。ぞっとします。しかも夜を徹するそうですから、将来作家にでもならない限り経験したくない行事です(笑)

ええ、歩いている映画でした。ただそれだけでも青春しております。

【青春に相応しい】後に豪華とされるキャストたち

青春真っ只中で、その有り難さを感じながら過ごす者なんてそうはいない。なんとも不安定な不安な時期が大切な時間であったとは、振り返られる年齢になったからではないと真実の価値はわからない。青春映画こそある程度の年齢になってから観る価値がある……かもしれない(笑)。

出演者は「アイドルっぽくない俳優」という著者の希望に添ったキャスティンングが為されたようです。

  • 甲田貴子:多部 未華子
  • 西脇融:石田卓也
  • 戸田忍:郭智博
  • 遊佐美和子:西原亜希
  • 後藤梨香:貫地谷しほり
  • 梶谷千秋:松田まどか
  • 高見光一郎:柄本佑
  • 内堀亮子:高部あい
  • 榊杏奈:加藤ローサ
  • 榊順弥:池松壮亮
  • 藤巻(教師):嶋田久作
  • 校長:田山涼成
  • 貴子の母:南果歩

うむむ、確かにアイドルっぽくはないが、後にまた活躍を見せる連中ばかりじゃないか。
貫地谷は主演を張るようになる一歩手間の頃か。柄本西原亜希は未だちょくちょく見かけるし。石田卓也?なんか聞いたことはある。加藤ローサはここではちょい浮く美人さんです。
それに池松壮亮!こしゃまくれたかわいい男の子だったのね。最初に認識したのがMOZU』の新谷という危ない奴だったので、ギャップが微笑ましい限りです。
多部未華子は本当に女優だなぁ。この映画はこの人のおかげ、というくらいです。贅沢言うのなら、これくらいの時に『君に届け』に当たっていたらどうだっただろう、なんて思う初々しさもあります。無論『君に届け』においてそれはそれで良かったですよ。

あー、もう、いちおう通り過ぎずに書かせてもらえれば、高部あい。けっこう味のあるいい女優さんになるのか、と思っていたのです。声優もやっておられましたし、順調だと思われたですが……。芸能界にはびこるクスリの根絶はまだまだ当分先になるのでしょう。

【ちょこっと】惜しいと思った点

気を抜いたら眠くなるような映画がいい!とはいえ、ただただ淡々と歩くだけでは、原作という物語がある以上はそれで済まされないです。

変わったヤツがおり、悩みもあり、時間の大切さを噛みしめるシーンあり、後に異常性格者になる池松演じる(ローサの)弟の参入ありで、いろいろなことが起こります。
そして青春といえば、なんと言っても恋愛は外せません(そうかな?)

ここから肝心なネタばらしになりますよー。

多部未華子を演じる主人公は、石田卓也が演じる男子生徒に話したがっております。どうやらこの歩行祭で会話を成立させたいようです。
周囲はそれを恋愛感情だと思います。応援の姿勢を見せます。
も、実はこの二人は異母兄妹。父親とする男性が亡くなった際に、お互い知った出生事実からの前へ進むに至るが一番のテーマです。最後のほうでようやく二人が言葉を交わせば、あと少しで歩行祭の終着が見えてくる。
良いお話しです。大げさでない感動があります。

ただこの異母兄妹という事実が早々に挟まれた葬儀のシーンではっきり解ってしまうのです。しばらく兄妹の事実は伏せてもらったほうが良かったような気がしないでもない。うまく匂わせてくれたら、引き込まれ方がだいぶ違ったのではないか、と思いました。
もっともそうすると映画の見せたかったテーマから逸れてしまうかもしれない。淡々とした映画を、と望んでいた自分の方向とは別な気がしないでもない(笑)。

あと、これは細かいこととなると思いますが、挿入歌の使用です。とても感情を込めた青春応援歌です。繰り返しになりますが、気持ちが入った歌が夜明け前の大きなカーブを描く道を行くシーンで流れます。
ここぞ、と強調したかったのかもしれません。が、自分にはせっかく静かに切々と迫ってくる映像表現のなかで違和感でした。これは個人的感覚に近い感想です。
そこで歌を挟むべきだ、気にするほどではない、という気もします。だけど妙に気になってしまったという感想を述べなければ、正直でない気がしますので書きました。これぞブログの醍醐味です(笑)。

気になったのは、その点だけです。観て良かったと思った作品ではあります。

【音楽に】あの花

因みに流れた挿入歌自体は悪くありません。

それよりも!
『夜のピクニック』の音楽にREMEDIOSの名があって驚きです。これから4年後に通称「あの花」(『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』)をやります。どこでどう繋がっているか分からないものです。
あの花の最終回に流れた英語による挿入歌はたまりませんでした。胸アツです。やはり静かな作品に対する反動は大きいようです。

最後の最後で、映画レビューから離れてしまったことが自分の感性の限界を強く感じています(笑)。